触れたな?
「なぁ、いつになったら治してくれるんだよ?」
「ホントだぜ、これかなり痛いんだけど!?」
仮面の男と顔に手を沢山つけている男。死柄木弔に言われるが、誰が治すものか。
「……そのままにしてると、壊死してその腕は使えなくなる。」
「じゃあ早く治せよ!!」
「っぐ!!」
継ぎ接ぎの男に殴られて、目眩がする。
「ちょっと。女の子を殴るのはどうかと思います。」
「あ?関係ねぇだろ。」
ここへ来てから爆豪くんはこちらへ来ないかと言う交渉をされ、私も同様に交渉、そして怪我を治すよう言われている。
だがどちらも拒否していて、私は既に幾度目かの暴行を加えられていた。
「なぁ、俺たちの仲間になってくれるんならもっと優しく出来るんだけど?」
「………………。」
「お前もだよ、爆豪勝己。」
爆豪くんと死柄木弔のやり取りを聞きながら、どうしたら良いのか考える。
大丈夫。森の中での方がよっぽど体が動かなかった。
今は、ちゃんと動く。…………轟くんならどうするかな。
拘束された手足。暴行や、森での炎のせいであちこち裂けた服と皮膚。傷は数しれず。
轟くんなら、緑谷くんなら、…………優秀な彼らならどうするだろう。
彼らのような脳みそなんて持ってない、馬鹿なりに考えるしかない。
どうしたら、どうしたら。
………………爆豪くんは、きっといつでも攻撃可能だろう。
でも私が足を引っ張っているから、何も出来ない。
…………失敗したら死ぬかもしれない。でも、やらない訳にはいかなかった。
私だって、ヒーローに。
「……わかった、仲間になる。」
「…………やっと首を縦振ったたな。」
「……は?」
嬉しそうな死柄木弔、今にもキレそうな爆豪くん。
「傷を治す、拘束を解かないと出来ない。」
そう言うと、拘束を解かれて自由に。
仮面の男の腕に触れて、治療を開始する。
「おぉ…………痛みが無くなってく!」
「本当に治癒系だったんですね。」
「資料読んでねぇのか。」
「お前…………何して…………。」
ヴィラン側の気が緩む。私がちゃんと治療して、爆豪くんが動揺しているから。だから、
今しか、ない。
怖くない訳じゃない、けど。だけど、だけど。唇を噛み締めて足に力を込める。
仮面の男から手を離して、出口に向かって逃げ出す。
「あ、ちょ!!おい!!」
「仲間置いて逃げてく気かぁ??」
「お友達、いらないんですか?」
こちらを追いかけてきて、私の手がドアノブに届く前に奴らの方が早く私の体に触れる。
私の体は今、服も燃えたり裂けたりしていて露出面積が多い。
私の肌は、普通じゃない。
«個性発生条件。相手の体、衣類の上からでも自分の体と触れ合わせれば細胞の操作が出来る。尚、最も速く個性が発動するのは手。»
私の体に触れた、ヴィラン達。
「っ離れてください!!」
黒霧の声だろうか、後ろで聞こえたがもう遅い。
私に、
触 れ た な ?
「っくぅ!!」
「ぅああ!!」
「ん、だよコレ!!」
触れた腕を制御無しで壊す。
そして憎らしげにこちらを見ている3人。
視界の端で弾けた火花。
「私、…………化け物ですから。触れない方が良いですよ。」
Boom!!!
3人を遠ざけた爆豪くん。しかしながら状況は悪いまま。
「お前、ヘッタクソな芝居打ちやがって。」
「え、へ、下手だった!?」
「あぁ、ヘッタクソ。大根役者。」
「頑張ったのにボロくそ……。」
酷い。どれほど勇気を振り絞ったと!!
「…………でも、」
「…………?」
「…………よぉやったんじゃねぇの。」
そう言って不敵に微笑んだ爆豪くん。
視線を辿れば、片手を抑えてモロに爆破を受けたヴィラン達。
「でも、どうする。このままじゃ、」
これからの作戦を練ろうとした時、
救けが、来た。
「…………もう、大丈夫だ。」
皆を、国民全員を安心させてきた言葉。
それが今はただ、私と爆豪くんだけに贈られる。
戦わなきゃ、逃げなきゃ。そう張っていた気は緩み、私の意識は落ちていった。