壊す
「……エリちゃん?」
「そう、会ってみてくれないかな?」
「会うって……私が?」
ここ最近、インターンへ行っていた緑谷くん達。酷く思い悩んだ様子だったと轟くんや響香ちゃん、それに自分の目で見てもそう思っていた。
しかしながらそれらはニュースによって、大きな事件に巻き込まれていたのだと知り、話せなかったのだと、言えなかったのだとわかって、彼らを酷く労った。
それから数日後の事、突如そのインターン組は揃いも揃って私にこう言ったのだ。
エリちゃん。聞いた話に寄ると、個性を利用されまだ幼いのに酷い扱いを受けていたと。またその個性は巻き戻す力で、通形先輩はその個性を利用した銃弾を受けて個性が使えなくなってしまったと。
「エリちゃんは自分の個性の使い方がわかってないんよ……。」
「だからそれを今も怖がっててな……。」
使い方の分からない個性。人を傷つけてきた個性。
人を、壊す個性。
…………とても似てる。
「それで、苗字さんの個性はコントロールとか、個性の効果とかもエリちゃんの巻き戻しに通ずる部分も多いと思って。……その、使い方を教えてあげると言うよりは、」
「……気持ちを理解してあげて、前を向けるような言葉をかける。」
だよね。と言えば目を丸くした皆。
…………上手く出来るかわからない。少なくともこの間轟くんに対しては、なんて言ったら良いのか、言葉が浮かばなかった。
でも。そのエリちゃんは私と酷く似ている。
……私がどんな言葉をかけられて、救われたのかは教えてあげられる。
思い出す、大切な宝物のような思い出。
私を暗闇のどん底から引き上げてくれたリカバリーガールの言葉を。
「上手に出来るかわからないけど、……私でよければ!」
「本当!?ありがとう!!」
「ありがとな、苗字!!」
「ありがとう、名前ちゃん。エリちゃんによろしくね。」
「エリちゃんの事よろしくね、名前ちゃん!」
向けられた期待に頷く。……私だってヒーローに。自分と同じように苦しんでいるのなら、救けてあげたい。
こうして私は週末に、緑谷くんと相澤先生と共に病院へ行くことが決まった。
◇
「……?どっか行くのか。」
「あ、轟くん!おはよう。」
「おはよう!僕達これから病院に。エリちゃんに会いに行くとこなんだ。」
「……苗字も?」
「うん。……ちょっくら人を救けに行ってくるよ!」
そう言って笑えば、轟くんも笑った。
「そうか。……頑張ってこいよ、いってらっしゃい。」
「「いってきます!」」
◇
「やぁ!来たね苗字さん!」
「こ、こんにちは、通形先輩!」
「うん、こんにちは!……君の個性や境遇については緑谷くんから聞かせて貰ってるよ。……ありがとう、エリちゃんの為に来てくれて。」
「い、いえ!!」
「……俺からも感謝するよ苗字。お前にとってエリちゃんの話は、トラウマに近いものだっただろうに。」
そう言って目を伏せた相澤先生に首を横に振る。
「トラウマ、でしたけど。それはもう乗り越えました!……先生のきっついテストで!」
本当に精神がぼろぼろになるかと思った、それぐらい辛かった期末テスト。でもあのお陰で私は今、この個性を思うがままに操れている。
それに、吐き出せなかった過去を自らの口で轟くんや響香ちゃんに伝えられた。乗り越えられた。だからもう、
「私は大丈夫です!!」
「……そうか。」
微かに笑った相澤先生。
「じゃあ、行こうか!エリちゃんきっと待ってるから。」
そう言った緑谷くんに続いて病室へと入る。
さて、どんな話をしようか。どんな言葉を話そうか。
……余計なことは考えず、シンプルにありのままを話すのが1番伝わるかもしれない。
飾らない、ただただ自分が生きてきたこれまでを。
その結果、これ以上なく幸せなのだと。
エリちゃんが前を向ける、向きたくなるそんな話をしてあげたい。
少しの緊張と、ヒーローとしての余計なお世話を胸に。
「……初めまして、エリちゃん。」