救う
「……っそれで、……他人を傷つけられるぐらいなら…………私がって……。」
ぽつりぽつり。初めましてな私に、これまでの辛かった道のりを教えてくれたエリちゃん。
「でも私、……ルミリオンさんを…………!」
「大丈夫、もう大丈夫だよエリちゃん。話してくれてありがとう。」
ぎゅ、とその小さな体を抱きしめて首を横に振る。
「……やっぱり、私たちは凄く似てる。」
「似てる……?」
「うん、まずは自己紹介からしようか。私の名前はさっき教えたよね……個性、個性は細胞操作。難しい言葉でわからないかもしれないけど、」
私はエリちゃんの、最近になって包帯が取れてきたと聞いた、まだ傷口がいくつかある腕をとって、触れる。
そして個性を使って、かすかな傷口も塞いだ。
「……凄い…………!治った!」
「こうやって、人の傷を治すことが出来るの。」
「……でも、私とはぜんぜん、」
「ううん、そんな事ないよエリちゃん。」
まずは、まずは。私を引き上げてくれた言葉。私の世界に色をつけた言葉を。
「その力は、……凄く素敵な力だよ!!」
大丈夫、大丈夫!!這い上がっておいで、明るい世界に。
「す、てき……?」
「うん。……私の力、凄いって言ってくれたよね?」
「うん、……傷治ったから。」
「一緒だよ、エリちゃんの力をもそう言った使い方を学んで、練習したらきっといつか、人を救える力になる。」
「……で、でも…………私の力は、皆を苦しませて、」
「……私も、小さな頃はそうだったよ。」
「え……?」
「人を傷つける使い方しか知らなくて。……それで気づけばお父さんを傷つけてて。ぼろぼろに、しちゃって。………………そしたら、周りには誰もいなくなっちゃった。」
「残ったのは、気味の悪い力を持った私だけ。……化け物だって吐き捨てられた私だけ。」
そもそも狭かった世界が、真っ黒に塗りつぶされた瞬間だった。
「その頃は、もう誰も傷つけたくなくて、でもどうしたら傷つけなくて済むのかわからなくて。……誰にも近づけなかった、私が関わると人が傷つくと思ったから。」
そう当時の心境を話すと、エリちゃんの目の色が変わった。
言葉でしか聞いてないエリちゃんの過去。でも、きっと。あなたもそうなんだよね、誰も傷つけたくないだけなんだよね。
「そんな日々を過ごしてたけど、ある日。ある人に言われたの。」
「その力は、凄く良い力だって。人を救える力になるって。」
「それって……。」
「そこから私は這い上がってきた、暗い暗い世界から。沢山勉強して、沢山練習したの。そしたらね、」
「……人を救える人になれたの。……化け物じゃなく、人を傷つけることも無い、人を笑顔に出来るようになったの。だから、」
だから。……だからだから、
「だから、……エリちゃんもきっとなれる!!人を救える人に!!」
伝われ、伝わって。暗いところにいるのは辛い、でもどうしたら良いのかわからなくてもがいてる。
そんな彼女に手を差し伸べたい。
「…………私も、……」
小さな頃、ぼろぼろのくしゃくしゃの泣き顔で聞いた。
私も、
「人を、救ける人になれる……?」
ヒーローになれますか……?
自分と重ね合わせて、少しだけ泣きそうになる。
こんな偉そうなことを言える日が来るなんて。
「……なれるよ、なれる。」
でも、私は大きくなるのを待ってられない。
今すぐこの子を救いたい。だから
「力の使い方、一緒に練習していこう。……一緒に頑張ろう、エリちゃん!」
「…………うん!!」
私の想いが伝わった。前を、向いてくれた。
花が咲くように笑ったエリちゃんをもう一度強く抱きしめた。大丈夫だよ、絶対に胸を張って歩いて行ける日が来るからね。
お天道様の下、にこにこ笑って歩ける日が必ず来るから。
「……やはりお前を連れてきて正解だった。」
「……本当に。苗字さん、ありがとう。エリちゃんこんなに笑ってくれるようになるなんて。」
「ううん。……先生、私エリちゃんに個性の使い方教えていきたいです。」
「……良いのか?」
「はい!!きっと、私と同じでコントロール凄く難しいと思うので…………私みたいに苦労する事は無いです、私のノウハウ教えられるのなら教えたい。」
そう伝えると、先生は緩く笑った。
「あぁ。わかった、頼んだ。…………でもまぁひとまず退院してからだな。」
「エリちゃん、退院したら苗字ちゃんといっぱい練習しようね!」
「う、うん……!それでいつか、……ルミリオンさんのこと、助けたい。」
「…………エリちゃん……!」
「……うん、必ず助けよう。いっぱい練習して、ルミリオンさん助けよう!」
「うん!…………えっと、」
おもむろに私のことを見てえっとえっとし始めたエリちゃん、え?
「……あ、もしかして名前かな?」
「え?名前ならさっき、」
「あぁ!俺たちはエリちゃんにヒーロー名で呼ばれてんだ、苗字ちゃんって言うのはヒーロー名じゃないから、呼べなかったんじゃない?」
「た、確かに。」
「それなら苗字さんのヒーロー名は、」
「……エリちゃん、覚えてね?」
「うん!」
いつかこの子が何にも縛られず笑えるようになった時、私の名前を希望の光として思い出せるように。
私にとっての、リカバリーガールのように。
「私の名前は、……ヒーロー名だよ!」