合同戦闘訓練

「今日はA組対B組で合同戦闘訓練を行う。」


「え!!何それ!楽しそう!!」


「合同訓練って何するんすか!?」


「……と言うのは名ばかりで、簡単に言えばクラス対抗のチーム戦だ。」


「クラス対抗……?」


「お互い5チームに別れて、それぞれ1チームずつ戦闘訓練。…………まぁ、競わせる訳でもないが結果としてクラス対抗のような形になる。」


「まさにA組対B組!!」


「うおお!!燃えるなそれぇ!!」


「……だが、今回の訓練においては人数が重要な要点となってくる。なのでうちのクラスは21名いるが、20名に揃える。」


「……え、それって誰か出ないってこと?」


「えー!!せっかくクラス対抗なのに、全員で臨めねぇのかよ。」


「悪いな、人数を揃えることが重要なんだ。……という事で、苗字。」


「………………えっ、あ、はい!!」


話を聞いていて、ふむふむ。B組とかぁ、個性全員は把握出来てないし、良い戦闘訓練に……なんて思っていたのだが。


「悪い、お前は救護担当として外れてもらうことにした。」


「えー!!苗字いないの!?」


「うちの大事な戦力だってのに!!」


外れる理由としては妥当だが、えー!!と叫ぶ芦戸さんや上鳴くんの言葉に嬉しくなる。へへ、大事な戦力、か!


「そもそも2つの組が全力でぶつかる。恐らく力は均衡。怪我人は多数出ると踏んでいる、リカバリーガールの負担が大き過ぎることも考えて、こうした。……悪いな。」


先生はここ最近、私が戦闘訓練にも前向きに臨んでいることや、エリちゃんの為にも自分の個性をより理解しようとする姿勢を褒めてくれていた。


きっとそれを汲んで、こうして謝っているのだろう。いやいや全然。


「いえ!!治療も大事な事ですから!それに、治療でも私の個性はちゃんと発揮出来るので、大丈夫です!」


それはそれで、ちゃんと自分の勉強になる。むしろこっちが本分だ。


「……そうか。恐らく全員何かしら怪我負って戻ってくると思うから頼んだぞ。」


「はい!」





へぇ、人数を揃える必要があったのは心操くんの為でもあったのかぁ。なんて。保健室のモニターで眺めながら始まった訓練。


そして数刻もすると


「まったく!!訓練とは言えやり過ぎなんだよ!」


「り、リカバリーガール!!また来ましたああ!!」


「ベッドが足りないよ!!!」


先生が言っていた通り、均衡したレベルの相手同士で戦った結果。怪我人多数、気絶者多数。


それに対して救護要員は2名。過重労働過ぎやしないか。


薬を飲んでも良くならなかった常闇くんの喉に触れながら、八百万さんの頭部も治療する。


「悪いな、苗字……。」


「いえ全然!大丈夫?痛みとかはない?」


「あぁ、少し息苦しいだけで…………。」


「……よし、どう?息苦しさは。」


「……うむ、良化した。感謝する。」


「いえいえ!」


「ほら、治ったらカロリーバー食べて戻りな!!」


常闇くんにカロリーバーを押し付け追い出すリカバリーガール。


今日も元気いっぱいだなぁ……と眺めながら、気絶してやって来た八百万さんの治療に専念する。


凄い戦いだった、八百万さんの機転。常闇くんの新技。


…………凄い。……置いていかれないようにしないと。


ただえさえ、入学してからの数ヶ月。……いや、養護施設に入ってからの時間は、戦闘訓練をして来なかったんだ。


強くなりたい、そんな気持ちは無いけれど。人を守れる強さは欲しい。


……今のままでは全然駄目だ、もっともっと頑張らないと。


「……んっ…………。」


「あ、八百万さん!」


「…………苗字、さん……?ここは……。」


「保健室だよ、八百万さん気絶してここに運ばれてきた。」


「そうだったんですか……、試合は!?」


「……負けちゃった、けど。……けど、凄かったよ八百万さん。」


私はそう思ったけれど、彼女の中では納得がいかなかったようで悔しそうな表情を浮かべた。


「わたくしはまだまだですわ…………私の組んだオペレーションも、適わなかった。」


「そんな事ない、今回は向こうが上だったけれど八百万さんは最後まで凄かったよ。」


何がどう、と伝えられない語彙力の無さが申し訳ないが、本当に。最後自分と大砲を相手に縛り付けて、最後まで抵抗するなんて。あんな発想中々生まれない。


「…………ありがとうございます。苗字さんも、ご立派ですわ。」


「……え!?」


何が!?と言うか八百万さんとは比べ物にならない程使えない奴なんですけど、と思ってしまって口をあんぐりしてしまう。


「こうして私達の傷を癒してくれて、戦闘になれば物怖じせず立ち向かう。…………同じ力を2つの使い方で使うなんて、きっと想像以上に難しいことでしょう。」


「そっ……。」


そんな事ないよ、と咄嗟に言おうとしたが、言葉にならなかった。それほどには訓練はしんどくて、辛かったのだと体が覚えている。


「それでも尚、今も自分の個性について沢山勉強なさってますよね、……私も日頃からそんな苗字さんを見て、励まされています。まだまだ上を目指さなければと。」


驚いた、八百万さんのような人は正直格上。かなりの格上だと思っていたから。そんな人が私を見ていたとは励まされていたとは。


「……へへ、ありがとう。八百万さんに言われてちょっとだけ自信ついた。」


「そんな!苗字さんは元より実力のある方だと認識しておりました。もっともっと自信を持ってください!」


ずい。その綺麗なお顔を近づけて、ぷりぷり。少しだけ怒った様子でそう強く言う八百万さん。


「う、あ、…………は、はい。」


び、びじぃぃん…………凄く嬉しいことを言われている気がするが、それどころじゃない。肌綺麗すぎる……美しすぎる!!


「……はっ、わたくしったらつい長居してしまいましたわ。治療ありがとうございました!」


「あ、いえいえ……はい、カロリーバー。」


「ありがとうございます!では!!」


足早に保健室を出ていった八百万さん。もう、私は何をしてるんだ。女の子相手にドキドキしちゃって。


…………いや、今のは仕方ないよなぁ。八百万さん美人だし、うん。


なんて熱くなった顔を手で仰いで冷ましていると、第3試合を映しているモニターの中は火の海だった。


………………火の海ぃ!?

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