年末年始
「それじゃあまた年明けにね!」
「うん!またね!」
また1人、また1人と見送っていく。
爆豪くんと轟くんが仮免合格し、クリスマスも終わって遂に年末。
帰省は無理かと思われていたが、プロヒーロー付き添いの元で許可が降りた。
とはいえすぐにインターンが始まるので、ゆっくり休む暇なんて無いのだが。
勿論私は帰る家なんて無いので、1人寮に残る予定。
気づけば残りは数人で、プロヒーローのお迎え待ちだ。
「あ。……じゃあ僕も行くね。」
「うん、行ってらっしゃい!」
「その、1人だけ残しちゃってごめんね……。」
「えっ?緑谷くんが謝る事じゃないよ。私が家族いないのがいけないんだし!あははは!!」
と笑ってから気づく。私からしたらもはや笑っちゃうような些細な事なのだけれども、一般家庭育ちの皆様からしたら、
「ご、ごめん……。」
「ああああ!!ち、違うよ!!自虐ネタとかじゃなくて!!」
申し訳なさそうに目を伏せた緑谷くんに慌てる。ち、ちが、ま、間違えた!!リアクション間違えちゃった!!
「ほ、ほら!!先生待ってるし!行ってらっしゃい!」
「う、うん……行ってきます。」
あわあわと見送って一息。その間にも続々とお迎えがやって来ていて、気づけば
「……あれ?轟くんまだお迎え来ないの?」
「ん、あぁ。1番最後で良いって言っておいたから。」
「え、なんで。」
「……俺は割と最近家に戻ったからな。」
そう言ってソファーに沈んでいる轟くん。それもそうだったな。
「…………寂しくねぇか?」
「うーん……皆に聞かれたけど、寂しいに決まってる!」
「っはは、そうだよな。」
「毎日21人で過ごしてきたのに、急に1人って。寂しくないわけが無いよ。」
「……悪ぃな。」
「いやいや。轟くんのせいじゃないから。……それに、ちゃんと待っててくれる家族がいるのなら、帰るべきだよ。」
寮に入って心配なことだろう。ヴィランに何度も襲撃されて。色々あったのに送り出してくれた皆の親御さん。
「ちゃんと帰って、元気な顔を見せるべきだよ。」
それが今1番出来る親孝行だと思うから。
「……そうだな。」
「それに、ほら。寂しかったら響香ちゃんに電話かける予定だし!他の子にも!先生たちもいるし、エリちゃんとも過ごす予定だから案外平気!」
「…………そっか。」
「だから、気にせず行ってきて?」
扉の外に、相澤先生が見える。もうお迎えが来てる。
「……ん。……俺にも電話していいからな。」
「え?」
「メールとかも。インターンの様子とかでも良いから。」
「え、で、でも。轟くんだって忙しいでしょ。」
「忙しくなるかもしれねぇけど、ちゃんと読むから。…………良いな?ちゃんと送れよ。」
わ、わかった。と返事をすると、満足したように微笑んで私の頭を撫でた。
そんなのずるい。ぎゅぅぅ、と胸が切なく鳴いた。
「じゃあな、また年明けに。」
「うん、良いお年を!」
「良いお年を。」
こうして今年は幕を閉じ、
年明け。
◇
「ほぁっほぁっ!!」
「パワーが足りんぞ苗字!!」
そんなこと言われましても……!!
必死に大振りな杵を振りかぶり、振り下ろす動作を何度も繰り返す。
「ほら、頑張れ苗字。エリちゃんの為に美味い餅をつけ。」
「頑張れヒーロー名さん!」
「頑張るぅ……頑張るよぉぉ……!!」
無表情の相澤先生に言われても別段やる気は出なかったが、可愛く応援してくれるエリちゃんを見て、筋肉痛覚悟で振り下ろす。
「良い感じだぁ!!もっと体全体を使って!!」
ブラド先生が捏ねつつ、謎に煽ってくる。え?まだ?まだ駄目なの?
恐らく悲惨な顔でもしているのだろう、視界の端でミッドナイトがオールマイト共にお腹抱えて笑ってるのが見える。くそぉ……。
◇
「ははは、楽しかったかい?苗字少女。」
「…………エリちゃんがいなかったら、杵振り回してたかもしれません。」
「ははははは!!それはそれで面白そうだなぁ。」
私と血と汗と涙の結晶であるお餅を皆で食べながら、オールマイトとお話する。
「君はまたリカバリーガールの元でインターンらしいね。」
「はい、治療や処置の勉強まだまだ足りないので扱かれる予定です。」
「彼女も中々厳しい人だからな……揉まれておいで。」
「はい!」
失われた平和の象徴。そう世間は言っているが、
こうして笑って、一緒にお餅を食べてのんびりしている平和の象徴だって、私は良いと思う。
だってこっちの方が、平和の象徴。って感じもしませんか。
緩やかに笑うオールマイトを見て、ここに幸せを感じ思わず口角が上がった。