あの日の後悔
「ちゃんと、ちゃんと伝えるはずだったんだ。卒業式で。」
「う、うんうん、その話は何度も、」
「それで、今も隣に苗字がいたかもしれなかったって言うのに、」
「いやだからそれも何度も、」
「なんで俺は今年も、こんな記事を読まされてるんだ?」
「うんうん、読まなくても良いんだよ!?」
「ヒーロー名、って書いてあって読まねぇ訳にいかねぇだろ。」
「あはははははは!!!」
「今年も落ち込んでんなぁ轟!!」
涙が出るほど笑っている切島くんと上鳴くん。そしてお腹をかかえて声すら出てない瀬呂くん。
「と、轟くん!流石にもうやめときたまえ、」
「俺は大丈夫だ。」
「いや、酔ってるよね?轟くん酔ってるよね!?」
「酔ってねぇ。」
飯田くんと共にお酒を取り上げようとするが、いかんせん彼のパワーはとんでもない。ぜんっぜん離れない……!!
はぁ。と諦めた僕は、スマホに表示された事の発端。…………いや、毎年起こるこの発端の記事を読んだ。
《今年も愛の告白祭り!!雄英高校卒業式!!》
《毎年のことながら、今年も雄英看護教諭であるヒーロー名への愛の告白が行われた。》
《1人の生徒を皮切りに、続々と何名もが彼女へ本気の愛の告白。》
《それに対して今年もヒーロー名は、ごめんなさい。の一言で彼らは卒業と失恋の涙に暮れた。》
「……苗字は可愛かった。ずっと。」
「そうだよなぁ、可愛い顔してたよなぁ。」
「それに傷も治してくれるし、俺ドキドキしちゃう時もあったぜ!?」
「それがまぁ、こんな綺麗な大人のお姉さんになるとはねぇ。」
瀬呂くんの言葉に思わず頷く。
元より整った顔立ちをしていた苗字さん。しかしながら年月を経て、その容姿は更に磨きがかけられ、こうして高校生のハートを撃ち抜きまくっている。
「あの時、ちゃんと俺が告白出来てれば…………。」
「轟くん轟くん!!ジョッキが冷えている!!キンキンに冷えてるぞ!!」
「お、いいなぁ!俺のも冷やしてくれよ轟!!」
「あの日の情けねぇ俺をぶん殴りてぇ……!!」
と言いつつ、切島くんのジョッキを冷やしてる。
これは大人になってから何度も何度もこうして酒の場で聞いた話だが、轟くんは卒業式で苗字さんに告白しようとしたらしい。
だがしかし。直前になって怖気付いてしまい。あろうことか、これからも良い友達でいような。なんて言葉を吐いてしまったそうだ。
そしてそんな彼の未来が…………これだ。
超人気イケメンヒーロー、ショートがこうして毎年、ヒーロー名への愛の告白祭り!なんて記事を見て荒れているなんて。ファンが知ったら失神しそうな。
しかもこれだけ荒れておいて、彼はなんて事ない顔して数日後には苗字さんと会うらしい。卒業後もしっかりと良い友達出来てるとの事。キレながら言っていた。
「ま、まぁまぁ落ち着いて…………毎年の事なんだから、」
「……いつか、高校生からの告白を受けました。オメデトウゴザイマス、なんて記事を見る日が来るのか……?」
「ちょ、轟く、」
「そんなの…………あんまりだろ……!」
「「「あはははははは!!!!!」」」
「ちょ、3人とも笑ってる場合じゃないぞ!!って、寝るんじゃない轟くん!!」
…………もうなんか、この状態の動画を苗字さんに送った方が早いんじゃないか。なんて思い始めてしまった今日この頃。