纏った白衣
「ねぇ、ヒーロー名ー。」
「何?」
「ヒーロー名ってショートと同じクラスだったんだよね?」
またその話か、なんて思いながら目の前にいるJKの話へ耳を傾ける。
「うん、そうだよ。」
「そっかぁ……ショートの怪我もこうやって治してあげたりした!?」
「てかショートって高校生の頃からイケメンだった!?」
「そうだなぁ…………怪我はよく治したりしてたかな。ショートくんよく怪我してたし。あと高校生の頃からイケメンだったよ、よくバラエティ番組とかで出てるでしょ?人気ヒーローの学生時代ーなんつって。」
「見るけどさぁ、先生から見てもそう見えんのかなって思ったの!やっぱイケメンだったんだぁ……彼女とかいたのかな!?」
「うーん……どうだろう。」
たぶん、いなかったと思うけどなぁ。卒業式の日にちゃんと想いを伝えたいって言ってたし。
…………結局伝えたのかな、伝えた上でフラれたのかな。
どうなったのかは知らないが、今はいないという情報しか知らない。個人情報なのでJK達には言えないが。
「ほら、治ったから教室戻りな。」
「えー?やだ、先生と一緒が良い。」
「ヒーロー名と話してる方が楽しいんだもん。」
「駄目。ここは皆がお喋りする場所じゃ無いんだよ。ほら、帰った帰った!」
ちぇー、と不満げに帰って行った彼女たちを見送り、カルテやデータへの入力。
…………雄英を卒業してから、私は看護教諭としての勉強を進め、晴れてこの雄英高校へ戻ってこれた。
戻ってきたのは数年前で、それから1年後。リカバリーガールはここの看護教諭を引退した。
任せられる後任が来て良かったよ、そう穏やかに話したリカバリーガール。彼女に見つけてもらった力で、彼女の役に立てたことが嬉しくて。
そう言って貰えた日は、年甲斐も無く大泣きしてしまった。
そしてそれからも日々色んな人に色んなことを教わりながら、看護教諭としての仕事もだいぶ安定してきたところだ。
一応扱いとしてはプロヒーローでもある、その為先生と呼ばれたりヒーロー名と呼ばれたり。生徒によって様々だ。
最近は、何かの拍子に相澤先生が私とショートは同じクラスだったと言うことを話してしまったらしく、度々生徒たちにショートくんやデクくん、ダイナマイトくんの事について聞かれる。
今言った3人の他にも皆有名人になってしまって。そんな彼らと同じクラスだった、なんてもう彼らからしたら面白いネタでしかない。
特にショートくんはJKの中でもファンが多くて、聞いてくる内容によっては過激なものもある。パンツの柄はどんなのでしたか、とか。見た事ある訳ないでしょうが。
同じ寮だからって、全てが見える訳でもないのに。それは皆もわかってるはずなのに、中々過激な事を聞いてくる。言われたこっちが恥ずかしくなってしまう。
どうにかショートと会いたいんですけど…………なんて相談も言われるが、そればっかりはどうしようも。
人気商売であるので、彼らも広告やテレビ番組などに出演する事も多々あるが、アイドルなどとはまた全然違うのである。
ヒーローの本分は人命救助。その現場に出くわさない限りは会えないだろう。
それをどうにか会いたい、と言われても。ごめんね、としか言えない。…………ほんと、私は度々ご飯とか行ってるから……その、ごめん。
そんな彼らと過ごす雄英での日々。
ずっと目指してきた、人を救けるお仕事。
「……今日もいい天気だな。」
白衣を靡かせ窓際に立つと、雲ひとつ無い晴天。
リカバリーガール、これからはあなたの見てきた景色を見ていこうと思います。
空を見上げて、私は1つ伸びをした。