特別講師
「へぇ!特別講師?」
「あぁ、相澤先生に頼まれて。」
「凄い!!なんか、プロっぽい!!」
「一応プロヒーローだからな。」
ふふ、と今日も上品に笑う轟くん。
「でも、ショートくんが来たら皆混乱しないかな?特に女子は。」
「そうか?」
あれ?ご自分の人気をわかってらっしゃらない?
「う、うん。……ほら、結構皆スマホの待ち受けとかもショートくんの画像だったりするし、」
「何がおもしれぇんだ?」
「あと、グッズとか。鞄にキーホルダーつけてたりとか!!」
「処分に困ったんじゃねぇか?」
「あ、あとは……雑誌とか!!CMとか!!新しくショートくんが広告とかに出てくるとすぐ話題になるよ!」
「余程話すことがねぇんだな…………平和なのは良い事だ。」
「……………………違う!!!」
「お?」
な、なんで。え?な、なぜここまで?えぇ!?
いつもキャーキャー言われているのは、皆が皆言われてると思ってる!?是非ともグレープジュースくん辺りに言って見てほしい、きっと鉄拳が飛んでくるから。
「とにかく女子たちはショートくんのこと大好きだから、…………扱いに気をつけてね?嫌なことはちゃんと嫌って言わないとダメだよ?」
「お、おお。」
下手したらパンツの柄とか聞いてくるから、侮っちゃいけない。可愛い顔して過激なこと聞いてくるから。
少し、いやかなり。自分の人気を侮っている彼が心配になりつつ、その日はやってきた。
◇
「おぉ……本当にいる……。」
なんだかグラウンドが騒がしくて、モニター越しに見ると相澤先生と並び立つショートくん。
そして彼を見て男子は沸き立ち、女子は意識を飛ばしかけている様子だ。…………これで保健室来ても治さないからね。
何やら始まったらしい戦闘訓練。繰り出される彼の氷は今日も美しい。
……さて、見てるだけじゃ駄目だ。モニターを消して、自分の仕事に取り掛かる。
……頑張って、食らいついて。これがプロの世界だとしっかり教わるんだよ皆。
◇
「ねぇ、ショート強過ぎ……容赦も無さすぎ……。」
「何言ってるの、容赦無かったらもっとボコボコにされてるでしょ。」
「確かに……。」
ボロッボロになってやってきた生徒たち。時間で言えば授業が始まって20分も経過していない。
確かに轟くん、やり過ぎでは無いか。これちゃんと何かを教えられてるのかな。少しだけ苦笑いをしながら、個性を使うまでもない怪我から順番に治療していく。
「ほら、処置終わった子から戻って!」
「はーい……またボコボコにされるかな?」
「どうだろうね。…………でも、」
無駄のない動き、強力な個性に頼ってばかりでは無い使い方。接近戦での強さ。
……彼のどこをとったって、
「ショートくんは、これ以上ない良い見本だから。……しっかり教わってきな!」
「……はい!!」
キリッ。いつもはおちゃらけてここで無駄話を展開するような彼ら。しかしながら彼らも立派なヒーロー科。
やる時はしっかりやってくれるのだ、そんな彼らを見るのが凄く楽しくて。この仕事を選んで良かったと思う瞬間の一つである。
さてさて、怪我も処置した。彼の強さもわかった。
ここから、どうする?
モニター越しに対峙する、うら若き生徒たちと経験と実績を詰んだ元同級生。
こんなの、見ていて楽しくないわけが無い。私は仕事の手も止めて、彼らの動きに釘付けとなった。