我儘
ガヤガヤと騒がしい廊下。なんだろう、お昼休憩になったとはいえ、この辺りを通る人はそう多くないはずなんだけ
コンコン。
ノックと共にその騒がしい声たちが更に近づく。…………もしかして、
「は、はーい……?」
ガラララ。
「ね、ショートって本当に彼女いないの??」
「いねぇ。……苗字、飯行こう。」
「おっ……。」
「じゃあ彼女募集してる??」
「してねぇ。……って言うかお前らも飯行ってこいよ。」
あ、彼女募集してないんだ……と密かにショックを受けながらも、呆れた顔して生徒たちを見つめるショートくんを眺める。なんだか新鮮だな。
「えー!?ショート一緒に食べようよ!!」
「俺は苗字と食べる。」
「ヒーロー名ね、ヒーロー名。」
「お、そうだった。ヒーロー名と食べるから、お前らは友達同士で食べてろ。」
「先生だけずるい!!」
「私達も一緒が良い!!」
ぎゃーぎゃー。騒がしくなってしまった保健室。
思わずため息をついて、私はショートくんに提案する。
「ショートくん、今日はこの子達と食べてあげたら?私は全然1人でも良いし、」
「嫌だ。」
嫌だ。マジですか。
「俺は苗字にも会いに来たんだ、ちゃんと養護教諭やってる苗字に。……白衣着てるのだって初めて見た、色々話してぇ。」
む。と軽く眉間に皺を寄せてそんな事を言ってくれるショートくんに、ちょっと浮かれてしまう。
だがそんな私たちの雰囲気を見ていたJK達が、
「…………ショートとヒーロー名って仲良いの?」
「ん、おお。俺たちは仲良いぞ。よく飯も行くし。」
「ええええ!!?そんなの聞いたことないけど!?」
「いつも適当にはぐらかされるし!!」
「……………………そうなのか?…………仲が良いと思ってたのは俺だけか……?」
「うわ!!酷い!!ヒーロー名酷い!!」
「ショート可哀想!!」
うわ、も、あーー…………もう。なんだこれ。
勘違いが勘違いを呼び、皆怒ったり悲しんだりしてる。なんだこれ。
「……違うって。皆に言わなかったのは、ショートくんと仲良いって言ったら会わせてとか色々言ってくるでしょ?」
元同級生ってだけでも色々と質問責めにあったというのに。
「ちゃんとショートくんとは仲良しだから。ほら!!ショートくんもそんな事気にしないで!!」
「……実は迷惑してたとか、そんなんじゃねぇよな?」
しょんぼり、なんとも悲しそうな顔。イケメンがそんな顔しちゃいけません。なんか、なんかなんでも許しちゃいそうになるから。
「ち、違うから!!ほら、もうご飯行こ!!」
私はショートくんの腕をとって保健室を出る。
「皆も一緒で良いよね?」
せめてもの妥協。私もいるから彼女たちがいるのも許してくれ。そう頼んだが、
「いや!!ウチら別で食べるよ!!」
「ショート先生と2人で過ごしたいみたいだし……また後でね!ショート!!」
………………あれ。
「おお、ありがとな。」
案外あっさりと引き下がったな。と目をぱちくりとさせてしまう。隣を見ると、満足気に笑ったショートくん。……と言うより轟くん。
「行こう、久しぶりのランチラッシュだ。」
「私は毎日食べてるよ。」
「贅沢者だな。」
「ふふ、でしょ。でも轟くんぐらい稼いでたら美味しいもの沢山食べれるでしょ?」
「…………まぁ。でも、1人で行ってもアレだから。また飯誘う。」
「楽しみにしてる!」
まるで学生の頃と変わらないように、私達の学び舎を歩く。
ただ違うのは、私たちはもう制服を脱ぎ捨てたという事だけ。