元同級生の教え
「…………もうちょっと、怪我をしない方法を考えなよ。」
「す、すいません……。」
何度も怪我を負ってくるヒーロー科の問題児。そんな彼はどことなく緑谷くんに似ていて、なんとも責めにくい。
「勝ちたい、置いていかれたくない。その気持ちはわかるし必要なものだよ。でも、」
傷の塞がった腕を撫で付け、しっかりと瞳を見つめる。
「体が駄目になったら元も子も無い。良い?自分の身を守ることも、ヒーローの務めだよ。」
「…………はい。」
「わかったらもう来ないでね。」
「えぇ!?」
「ふふ、それぐらいの意気で訓練に取り組むこと。ほら帰った帰った。」
カロリーバーを投げ渡し、保健室から出ていくのを見送る。
相澤先生も手を焼いている彼のこと。ちゃんと見ておいてあげないと、いつか。いつか限界がやって来る。
そんな日が来ないために、私がいるんだから。
◇
「………………え!?ヒーロー名!?」
「今日は特別にヒーロー名が見学に来ている。まぁ気にするな。」
「いや気にしますよ相澤先生!!」
「一体何しに……?」
「……皆が怪我しないように見張りにきたよ!」
にっこり。笑って問題児を一睨み。
この間釘を刺したばかりなのに、翌日にはまた一度の細胞活性では間に合わないほどの大怪我を負ってきて。
一体どんな体の使い方をしたらこんな事になるんだ、と怒りの見学だ。
その問題児は顔を青くして、クラスメイト達にも絶対お前だろ、なんて視線を送られている。少しだけ可哀想だが、それでも看過出来ないほどのところまで来てるんだ。しっかりと見させてもらおう。
◇
「悪いな、わざわざ来てもらって。」
「いえ!!全然。」
「俺の目の届かないところでも勝手に怪我してんだ、あいつは。…………恐らく体と個性の使い方が合ってない。」
はぁ。と溜息をついた相澤先生と、こうして生徒たちを眺める日がやって来るとは。少しだけ感慨深い。
「……そういうの含めて、やっぱり緑谷くんに似てますね。」
「あぁ。本当に。困ったやつらだ、どいつもこいつも。」
と言いつつも、少しだけ楽しそうに口元が緩んでしまっている先生。
「……そんな皆を守るためにも、ちゃんと見ないとですね!!」
「あぁ、頼んだ。」
「はい!」
1対1の戦闘訓練を行っている彼らの中で、問題児を重点的に見つめる。
……確かに。パワー系の個性だが、体の成長や筋肉が不足していて衝撃に耐えられていない。
繊細なパワーの調整、筋肉の増強。これが何より足りてない。
でも、彼も高校生だから。目の前の相手を倒したくなってしまうから。
その度にパワーの限度を外れて、こうして、
「駄目だよ。その使い方は。」
「っえ、せ、先生。」
力みそうになっていた腕を掴み、強制的に止める。
「きっと何度も相澤先生から言われてるだろうけど、使い方と体が合ってない。それが合うまでは、体に見合った使い方までしかしてはいけない。」
「……っでもそれだと、俺は!!」
「勝てなくても、今はそれしか出来ない。それがあなたの実力だ。…………それが悔しいのなら、」
教室で授業中空気椅子にてトレーニングする姿、勉強しながら握力をトレーニングする姿。
寮に戻っても、外で自主練に励む姿。クラスメイト達の個性を研究する姿。
まるで昨日の事のように思い出せる。それらの光景と、それらを見た時に凄いなぁ。と漏らした記憶。
「…………悔しいなら、地道に努力するしかない。少なくともデクくんはそうやって強くなってた。」
「え、で、デク!?」
「うん。デクくんも、最初は沢山困ってた。体も沢山壊して、不器用にも程があるってぐらいに。でも、沢山の努力を重ねて今みたいに強くなったんだよ。」
「………………そうなんですね。……俺も、俺もデクみたいになれますか……?」
希望を少しだけ見出したような瞳。しかしこればっかりは
「どうだろうね、ここからの頑張り次第だよ。コントロールと筋トレ。精神的にも冷静を保つトレーニング。足りてないから精進あるのみ!!」
デクくんの並々ならぬ努力を見てきたから言える。簡単な道では無いと。それでも、
「…………はい!!」
きっと、この子なら乗り越えてくるだろう。
意志を強く持った凛々しい表情。…………うん。
今のあなたは、どこの誰よりずっとずっとかっこいいよ。