それぞれの役目

苗字を幸せにする、そう固い決意を女子生徒達とした訳だが、


「大丈夫ですよ、もうすぐ痛みも無くなりますからね!」


汗を滲ませながら、前線から外れたヒーローの治療にあたる苗字。それを見て日頃のギャップにやられる俺。


…………悪い、行動に移せるまでには時間がかかりそうだ。


今はただ、会う度更新していく魅力に酔い潰されている。





作戦通り、前線のヒーローが入れ替わりで戻ってきたり前線に向かったりしている。


今回、違法麻薬。………中身は個性の増強剤を作り販売しているヴィラン達のアジトを発見したため、こちらも戦力を増強し、攻め込むと言う作戦に招集された。


役割としては治療、場合によっては応戦。と言った感じだ。


相手はその個性増強剤を使ってくると踏み、こちらのプロヒーローも多くの人数が招集されている。


その中でも元同級生が非常に多く、場違いだが同窓会みたいだな。なんて思ってしまった。


とは言え非常に危険な作戦。これだけ多くのプロヒーローが集まってる。……そんな中でも戦力として期待されている緑谷くん、爆豪くん、轟くんは前線に赴く回数や時間が長く設定されているようで、……正直心配にもなる。


どうか、無事で。命さえあれば、だ。


願うようにして、冷えた指先を擦り合わせる。


そして激戦が繰り広げられながら、後方にて負傷したヒーロー達の治療にあたる。


勿論多くの人数を治療するので、私一人では到底回らない。なので、


「ほら、どんどん来るよ。気張りな!」


「はい!!」


私の師匠、リカバリーガールと共に目の前で苦しむヒーローを救う。


私は、治すヒーローだ。戦う彼らの支えになる。


だから、どうか。無理せずに戻ってきて。





制圧が進む。


こちらの陣営もかなりの人数やられてしまったが、それでも相手を圧迫出来ている。俺たちの方が押している。


しかしながら疲労感は募ってきて、足元が何度かふらついた。


その度親父や緑谷に声をかけられ、なんとか正気を保ってきた。


…………限界が近いのは、こちらも同じ。


やはり個性増強剤は侮れない。一人一人がプロヒーローでもないのに強力。


「ショート!!」


「っ!!」


咄嗟に攻撃を避けるが、避けきれずに腹部から血が吹き出す。


患部を抑えながら、特攻してきたヴィランを仕留める。


「大丈夫!?」


「っあぁ……なんとか……。」


「後方へ戻れ、救護隊の元に行け。」


親父の言葉に頷き、後方へ振り向く。


…………なんだ、あれは。


後方へ駆け抜けていく何か。…………よく見れば、ヴィラン側の連中。


誰も、誰も気づいていない。あいつらは一直線に後方へ向かっている。


逃げ出しただけか?…………いや、でも。何度でも復活して戦線に戻ってくるヒーロー達。それを考えれば、


…………俺なら、そうする。救護隊を潰す。


痛みから呻くが、構わず駆け抜ける。


「ショート!?」


「ショート!!無理しちゃ駄目だよ、」


「……っ救護隊が狙われてる!!!」


「え!?」


緑谷も驚きつつこちらへ向かってくるが、前方からヴィランに襲われて動けそうもない。


…………気づいてるのは俺だけ、俺がやらねぇと、


視界が霞む。出血が多すぎる。


苗字…………苗字……!!!


頼む、気づけ。そこにいるヒーロー達は戦えない。リカバリーガールも戦えない。


お前しか、お前が。


ずる、自分の足元に出来た血溜まりに足を滑らせ、血に伏せる。


頭に食らった衝撃で、俺の意識は一瞬で落ちた。





……………………どう、して。


「……ヒーロー名、手動かしな。」


「……………………。」


「ヒーロー名!!!」


リカバリーガールに怒鳴られても、体が動き出さない。


浅く呼吸を繰り返し、血に濡れた体を横たえられている。


こんな姿、見たくなかった。


こちらまで呼吸が浅くなり、はくはくと上手く息が吸えない。


道中で倒れていた、と言われながら連れてこられたショートくん。


なんで、こんな事に。


「あとは頼みま…………なんだお前、っぐ、ぁ!!」


聞こえた呻きに振り返ると、ゆらりとこちらを見つめているヴィラン。


なんでここに。思考が追いつかない。周囲を見渡すと既に囲まれていて。


「っリカバリーガール!!下がって!!」


こちらに攻撃を繰り出してきたヴィランの前に立ちはだかり、恩師を守る。


「あんた、無茶だよ!!こんな人数、」


「…………前線に伝えてください、少しでいいから人員を!」


「…………………………死ぬんじゃないよ。」


「はい!!」


彼女が小さなからだで駆け出したのを確認し、怪我人たちを守るように立つ。


こちらを睨みつけてくるヴィラン。計7名。


どうする、どうする。


少なくとも1人では勝てそうもない、相手は個性増強剤を使ってるんだ。1人倒せるかどうか。


バレないように足をショートくんに近づけて、治癒を開始する。


間に合うか、間に合わないか。間に合っても意識が戻るかどうか。


私がやられるのと、ショートくんが目覚めるの。増援がやってくるの。どれが一番最初になるか。


私は迫ってくるヴィランを相手に思考した。

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