誰が為

早くしろ、と言う言葉と呻き声に体が震える。


早くしないと、早く、はやく。


でも足は一向に動かなくて、今も尚私のせいで苦しんでる轟くんに泣きそうになる。


「…………でき、ません、せんせい。」


「簡単なことじゃないのはわかってる。」


「できないんです、体が動かない。…………補習で良いので、おねがいします。」


ガタガタと震えて戦闘どころじゃない。轟くんは何か言いたげにこちらを見ているが、ごめん、ごめん。早く先生に解いてもらわないと。


「不合格で良いので、お願いします、はやく、轟くんを、」


「…………それでいつか、誰かを守れなかったとしてもお前は後悔しないのか?」


え。


その言葉と同時に更に轟くんは縛り上げられ。


「ぅ、ぐ、ぁああ!!!」


「轟くん!!!」


喉からつんざくような悲鳴が零れた。なんで、なんでなんで。


「力を持っているのに、助けられなかった。そんな後悔しないのか?」


「ぐぅ、ああ、苗字っ……!!」


やめてやめてやめてやめて


「辞めて!!!」


感情のままに相澤先生へ掴みかかるが、あっさりと蹴り飛ばされて地面に転がる。


「ぅ、ごほっ!!げほっ!!」


「お前の人を救いたいと言う気持ちはその程度か。」


「おねがい、します…………辞めて……!!」


「辞めてと叫んでも、ヴィランは辞めちゃくれねぇよ。…………お前が辞めさせるんだ。」


ギッ。という音ともに更に締められ轟くんは


「がぁっ!!……ぐ、……うぅ…………。」


「轟くん!!」


ついには涙が零れる。泣いたって仕方ないのに、苦しみ続ける轟くんにどうしたら良いのかわからなくて。


「先生、お願いします、やめて、…………もう、人を壊したくない……!!」


「………………なら、お前は。」


先生の静かな声が響く。


「お前は、轟が死んでも良いのか?」


…………………………死?


ヒュウ、音を立てて空気が喉を通った。


死。……………………死、いなくなってしまうこと。


そんなのは、そんなのだけは。


ドクン。胸が脈打つ。


《誰よりも強くなれ!!!名前!!!》


涙を拭って走り出す、先生の元へ一直線に。


大丈夫、この体の使い方も動かし方も嫌という程に教えこまれた。


繰り出された蹴り、を躱して追ってきた捕縛布を掴み、引き寄せながらグローブを外し、それらを操る腕を掴んだ。


一息に、躊躇うな。


力を込めて、コントロールする。壊さない程度に、それでも動きを止めるぐらいに。


「っぐぁ!!」


「轟くん!!」


先生の手が緩んだ隙に捕縛布をゆっくりと緩めて、彼を地面に降ろす。


しかし先生はあれだけで終わってくれるはずも無く、片手を使えずとも追ってくる。


今度は壊していないもう片手を掴むが、恐らく抹消されている為、手を引き寄せながら顔面に膝蹴りを入れる。


そして一応その片手も破壊して、激痛に歪む顔を眺めながら手錠を嵌めた。

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