「…………お?おお!?おい!!轟!!」
「?」
名前を呼ばれて、寮の玄関で何かを持っている上鳴に首を傾げる。
「お前、ラブレター来てんぞ!!」
「え!?」
「ラブレター!?」
「嘘!?」
「流石イケメン!!」
クラスの連中がそう声を上げるが、そんなの今まで来たことすらない。本当か……?と腰を上げて受け取ろうとすると、
「だって裏に苗字名前って書いてある!これ女の子だろ!?」
「……苗字?」
なんだ、苗字か。と平然としておきながら、待ち侘びた返事が返ってきたのだと嬉しくなる。
「その子は友達だ。」
「友達!?」
「え、轟うちら以外に友達いたの!?」
なんか失礼な言葉が聞こえたが、無視する。
「……あ、もしかしてこの間言ってた子?」
緑谷が駆け寄ってきて、聞かれる。この間、と言うには随分前な気がするが、苗字の事を話したのは緑谷と飯田にだけなので頷く。
「仲直り出来たんだね!」
「……あぁ。お前のお陰だ。」
「えぇ!?そ、そんな僕は何も……って言うか女の子だったんだね……。」
「……?言わなかったか。」
「聞いてないよ!僕てっきり男だと思ってたよ……。」
「ねね、轟くん。その子はどこの子なの?どこで知り合ったん?」
「どこ…………実家だ。」
「え?」
「実家に、あいつが飼ってる猫が迷い込んできて。その猫を俺が可愛がってたら迎えに来たあいつと出会った。」
「え、じゃあご近所さんって事?幼馴染的な?」
「……幼馴染って言うほど昔から知ってる訳じゃねぇけど…………まぁそんな感じだ。」
「そっかぁ!!でも手紙送ってくるほどなんて仲良しなんやね!
「……あぁ、仲は良い。」
早く読みてぇな。上鳴から受け取った手紙を大事に持って、俺は何かと質問をしてくる皆を放ってエレベーターに乗り込んだ。
◇
ぺりぺり。封を開く。
入っていた便箋を抜き取ると、以前勉強を教えた時に見た苗字の字が。
綺麗でも、汚くもない。でも……悪くない、そんな字だ。
『お手紙ありがとう、とりあえず轟くんの字が物凄く綺麗だったので3回読みました。』
「ぶふっ。」
いきなり何書いてんだこいつ、謎の発言に俺のツボは持ってかれた。
『私も轟くんと会えない生活になって、凄く寂しく感じてます。でも、轟くんも頑張ってるんだな。とわかったから、大丈夫!!私も轟くんに負けないよう頑張るよ、テストで赤点も取らない!』
なんとも明確な目標に、またも笑ってしまう。だが大事な事だ、これを機にちゃんと授業も聞いてくれ。
『正直轟くんの方が遥かに大変そうに感じる、だから、轟くんの方こそ何かあったら、いや無くても電話とかしてね。』
苗字の声でそう聞こえた気がした。なんとも言いそうな内容、いや本人が書いてるんだから当たり前だが。
『それに、たまには轟くんの声も聞きたいな。電話してね、とか言って私から電話来たら笑ってね。お返事待ってます。』
唐突に終わりを迎えた手紙。たまには声も聞きたいなんて、そんな事言われると思わなかったからその文字を見つめてしまう。
また簡単にそんな言葉を並べてみせるのか、お前は。
手紙を丁寧に封筒へ戻し入れ、溜めてた息を吐く。
どうしてくれるんだ、この顔を、熱を。