どんちゃん騒ぎ

「体育祭?」


「うん、一緒に行かない?」


にこ!と人懐っこい笑みを浮かべて、チラシを見せてきたのは冬美さん。轟くんのお姉さんだ。


「だいぶヴィランによる襲撃も落ち着いて、一般客も入れるんだって!だから一緒に焦凍の活躍見に行きたいなぁって!」


「へー…………行きたいです!!」


話す轟くん。笑う轟くん。悲しむ轟くん。真顔の轟くん。…………あれ?私の中の轟くんレパートリー少なくない?


……とにかく、それくらいしか私は轟くんのことを知らない。なんなら彼の本分であろう個性を発揮しているのなんて、テレビ越しにしか見たことない。


なのでそれを見ることが出来る体育祭は是非とも行きたい!!私は嬉しそうに微笑んだ冬美さんと共に、体育祭へと行くことにした。





『ってことでね!楽しみにしてる!!』


「お、おお…………わかった。」


『それじゃあまたね!おやすみ!』


「あぁ、おやすみ。」


切れた通話に、マジか。と呟きそうになる。


「お、彼女との電話終わった?」


「…………彼女じゃねぇよ。」


「本当に違ぇの?だってあの子だろ?苗字さん。」


「……あぁ。」


「手紙も送って電話もして。……それで彼女じゃねぇの!?」


「違ぇ。」


「えぇー!?その子のこと好きじゃねぇの!?」


上鳴の言葉に詰まる。


「…………………………好き、だけど……。」


「………………………………え!!?!?」


「ちょ、今轟なんて!?」


「今なんか面白いこと言わなかった!?」


「え!?何!?」


騒がしくなるクラスメイト。待て、皆どこから、と言うか聞いてたのか。


「えー!?好きなら告っちゃいなよ轟ぃ!」


簡単に言うな、芦戸。


「男なら悩んでねぇで一言!!言ったれ!!」


言えたらとっくに言ってるぞ……切島。


その他にも色々と言われて、更に頭の中がぐちゃぐちゃになる。ただえさえ体育祭に苗字が来るって知ったばかりなのに。





「と、轟くん……大丈夫?」


「………………………………あぁ。」


「本当かい!?なんだか顔色も悪く見えるぞ?」


「大丈夫だ…………質問攻めに遭って、ちょっと…………自分の情けなさに打ちのめされた、だけ……。」


なんで告白出来ないのか。何故言わないのか。そこまで仲良くなっておいて意気地無しだ。


応援する。と言っておきながら俺に対する言葉の鋭利さに遠慮のないクラスメイト達。でも言っていることはごもっともで、このまま友達を続けていても進展しないのは事実。


それを、告白を出来ない自分の情けなさ。それが露呈して更に心労へと変わった。


「お、お疲れ様…………あれだね、最初に上鳴くんや芦戸さん達に聞かれたのがまずかったね……。」


「彼らはあぁ言った話が好きだからな……気をつけた方が良い。」


「……………………次から、気をつける。」


…………苗字、体育祭に来るって言ってたから休み時間にでも会えると思ったが……俺が会っちまうと皆の注目を集めてしまう。


そうなると、恐らく苗字は慌ててわ、私なんか見ても……!と逃げ出すかもしれねぇ、それは駄目だ。


好奇心の旺盛なクラスメイト達のことを考えて、溜め息が止まらない。