午前の部

「いやっ……もう!!何最後の!?青いわ……青春ね!!選手では無い彼女の轟くんを想う気持ちで、順位はラスト5秒にどんでん返し!!その結果がこちらよ!!」


ミッドナイトがくねくねしながら発表した順位、その1位に君臨したのは轟チーム、と言う文字で。


「……………………良かっだぁ………………。」


ほっとした私は力が抜けて、轟くんに全体重を掛けてしまう。


「……お前、無茶すんなよ。」


肝が冷えただろ……と少し呆れた顔をしている轟くん。あれ、もっと喜んでくれるかと思ったのに。


「う…………すいません…………いやでもちゃんと根拠はあったんだよ。」


「根拠?」


「うん、私家庭科と体育の成績はいつも良いから!!」


どうだ!!と言わんばかりに轟くんを見ると、……はぁ。と溜息をついていた。あれ!?


「…………まぁ、とにかく。ありがとう、苗字のお陰で助かった。」


「いやいや…………それにしても皆凄いんだね、個性を使いこなしてて…………私はずっとびっくりしっ放しだったや。」


「そんな奴ら相手に、あんな事出来る苗字はすげぇよ。」





「あはは…………轟くんが負けちゃうって思ったら、やらずに後悔するよりやって後悔しよう!って。失敗したら国民全員に笑ってもらおうって思ってやった。」


「…………ふふっ、なんだよそれ。」


きっと怖かっただろうに、沢山怖い思いもしただろうに。


俺の為にそこまで動いてくれるなんて。本当に嬉しくて仕方が無い。


「次からトーナメントだよね?頑張って!!観客席で応援してるから!!」


ゆっくりと地面に降ろすとそう言ってくれる苗字。


「あぁ、勿論。お前が繋いでくれたんだ、必ず結果に結びつけてくる。」


そう返せば、苗字は屈託の無い笑顔を浮かべて、俺の胸は優しい優しい友達へと苦しいぐらいに高鳴った。





「轟ぃ……見てたよ……?本当に仲良しなんだねぇ……?」


「もうあんないちゃいちゃしてんの見せられたら、更に気になるじゃん!!俺達にも紹介してくれよ!!」


「……………………。」


競技が終わっても終わらないゴリ押し大会。何をやってるんだ…………。


午前の部を終えて、昼食へと向かってる途中。競技前と変わらず轟くんは無言を貫いている。


それにしても最後のあの子……苗字さんの動きには驚いた。まさか自ら轟くんの元へ帰るなんて。適わなかったなぁ、と少し悔しさが募る。


上鳴くんや芦戸さん達とは意味合いが違うと思うが、僕も彼女に少しだけ興味が湧いてきた。


「なぁ?今から昼飯だろ?呼んでくれよ!!」


「確かに!!会わせてよー!! 」


そう言って轟くんから離れない2人。そろそろ辞めてあげたら良いのに…………と思っていると立ち止まった轟くん。


「………………………………わかった。」


「…………え?わかった?」


「……………………マジ!?呼んでくれるの!?」


その言葉に他のクラスメイト達も振り返る、正直午前の部で彼女の姿を見た者や、接した者は多く、興味は皆あるのだろう。


「あいつも、お前らのこと凄いって言ってたから………苗字も興味あるのかもしれねぇし、聞くだけ聞いてみる。」


そう言うと観客席の方へと戻って行った轟くん。


「…………轟くんだけで大丈夫だろうか?」


「え?」


すると横で心配そうに眉を寄せた飯田くん。


「轟くんは良い意味でも悪い意味でも言葉数が少ないだろう?……一緒に昼食を取ろう、とだけ言って連れてきて僕たちが居たら、彼女は驚いてしまいそうだ、と思ってね。」


……………………………………確かに。


充分に、それはもう充分過ぎるほどに想像が容易い。


驚く苗字さんの隣で、言わなかったか?とか言って首を傾げてそうだ。あぁ!!絶対そうなる!!


「ぼ、僕も行ってくるよ!!」


「あぁ!そうしてあげると良い!席は取っておく!」


「お願い!」


飯田くんに手を振って、僕は先に行ってしまった轟くんを追いかけた。