夏だ!!

「夏だ!!プールだ!!ポ〇モンだ!!!」


と言ってはしゃぐ友人たちを見ながら私もはしゃぐ。


なんたって今日は終業式。明日からは夏休み!


「ね、夏休みプール行こうよ!」


「いいね!!」


「水着無いから買いに行こうよ!!」


「いいねー!!」


キャー!なんつってはしゃぎまくる。これぞ華の女子高生。楽しまなければ損だ!!


「あ、ねぇねぇ轟くんへの片想いが辞められない人?」


「悪意しか感じられない。」


何その名前、普通に名前で呼んでよ。


「まぁまぁ!……プール行くのにさ、轟くん誘ってみない?」


「………………は!?」


「あ、いいね!!!なんなら雄英の人達何人か連れてきてもらうとか!!」


「い、いやいや。轟くん忙しいでしょ……。」


「とか言って。名前が頼めば来てくれるんじゃない?ほら、轟くん結構名前の事お気に入りなんだからさ!」


あの日。突然電話がかかってきた日話した内容を、こと細かく友人達に聞かれ答えたところ。彼女達の中では、脈アリなのでは?なんて答えに落ち着いた。


そんな訳無さすぎてもはや否定する気も怒る気も起きない。冗談過ぎる。


「いやいや…………轟くんはちゃんとノーと言える人だよ……。」


「わからんじゃん!!ね、聞くだけ!ね?」


「…………わかった。」


もし断られても怒んないでよ?と念を押してから、轟くんにメッセージを飛ばす。雄英も今日終業式とは限らないから電話は危険だ。


「とりあえず夏休み忙しそうか聞いてみた。」


「よし。じゃあ水着買いに行くぞ!」


「エリート達と遊べるんだ!気合い入れてこうぜ!!」


「ちょ、まだ決まったわけじゃ!」


ないんだけど!!という声は友人達の浮ついた声に消し去られた。





「…………あ。」


水着を見ていると、スマホにピコン。と通知が来て、


それを開けば轟くん。


『インターンが2週間程度入ってる、そこ以外は予定入ってないけど、何かあったか?』


…………ほらやっぱり忙しいじゃないか。


夏休みなんて8月いっぱいがほぼメインだ、その中の半分程度インターンに費やすのなら、残りの2週間は課題をやったり実家に帰ったりして終わりだろう。


こんな浮ついた連中と遊んでる暇ないよね…………とビキニをあれこれ物色してる友人と、ちゃっかり買い物かごに気に入った水着を入れてしまっている自分を見て、これがエリートとの差か……と虚しくなった。


「あ、轟くんなんて?」


「2週間ぐらいインターン入ってるんだって。だから残りの数週間は課題とか実家帰ったりで忙しそうだし、やっぱり辞めとこうよ。」


「ふーん……………………とりあえず話だけ出してみたら?」


「あれ、話聞いてたのかな。」


今忙しそうだからやめとこって言ったじゃん、こいつ浮ついてんなって思われたくないしやめとこって。


「だってさー…………名前、轟くんと遊んだことある?」


「え?」


遊んだこと、……………………無いな。


「今までの話聞いてると、轟くんの実家で顔合わせて仲良くなったんでしょ?………でもそれ以外で会ったことほとんど無いんじゃない?」


それは…………………………確かに、そう、だな。轟くんの家の周辺で帰ってくる轟くんと会ったり、轟くんのお家で会ったり。


勉強会はやったことあるけど、あれは遊んではないからな……。


「だったらさ、轟くん名前が遊びに誘ってくれたらきっと喜ぶよ!」


「えぇ……?」


それはどうだろう。…………あんまり断る印象も無いけれど、それで断られた時の私のメンタルよ。暇じゃねぇんだ、悪ぃな。とか言われてみろ、メンタルは天に召される。


「だって、名前に嫌われちゃったかも。で物凄く落ち込んでたんでしょ?それなら絶対下心有り無し関係なく名前の事は好きじゃん?」


「それは、まぁ…………仲は良いと思うけど……。」


「……名前は轟くんから遊ぼって言われて嫌な気持ちになる?」


………………………………そんなの



「……ご褒美じゃん。」


「うわ。」


「うわぁ。」


「う、うるさいな!?」


素直に出た言葉がキモすぎて、友人たちはしっかり引いてる。それはもうしっかりと。


「それなら言うだけ言ってみなよ!!きっと轟くん前向きに考えてくれるよ。」


そう言う友人に、うーん、うーーん。と頭を悩ませ、


…………私だったら、轟くんが遊びに誘うのを躊躇して誘ってくれなかったら、寂しいなぁ。と言う結論に達して、


「……わかった、誘ってみる!」


私は友人たちが笑顔で見守る中、メッセージを紡いだ。





「……………………プール?」


送られた文面に瞬きを繰り返してしまう。


「どうしたの?轟くん。」


「いや…………苗字が一緒にプール行かないかって。」


「え!?デート!!?」


「デッ…………!?ち、違ぇ、苗字の友達もいるって。それに俺の友達も良ければって書いてある。」


「あ!そ、そうなんだ……びっくりした…………。」


なんでお前がびっくりすんだ、緑谷。


でも珍しい。苗字から遊びの誘いなんて。


初めてか…………?…………初めてだな。そう気づいて少しだけ気持ちが浮つく。


「行くの?」


「……そうだな、せっかく誘ってくれたし。……お前も来ないか?緑谷。」


「え!?僕?」


「あぁ、友達も良ければって言ってるから。お前さえ良ければ。」


「そ、そっかぁ…………じゃあ行かせてもらおうかな?どうせなら飯田くんとかも誘ってみようよ!」


「あぁ、そうだな。」


緑谷の提案に頷き、飯田に声をかける。するとそれを周辺にいた女子たちに聞かれ、


「え?なになに?苗字さんと遊ぶの!?」


「いいなー!!私達も会いたい!苗字さんの友達とも会ってみたいし!」


そう盛り上がってしまい、更には上鳴や峰田にまで聞かれてかなりの大人数集まってしまった。


「……こんなに大勢で行っても大丈夫なもんなのか?」


「人数制限とかは無いと思うけど…………一言伝えておいた方がいいかもね……。」


既にプールへ行くことで頭がいっぱいな皆を見て、断ることは無理だと判断し苗字にメッセージを飛ばす。


かなりの人数集まっちまって。大勢連れて行っても平気か?と。


するとその返事がすぐにやって来て、


『全然良いよ!来てくれるだけで嬉しいから!』


なんとも快活に笑って言ってそうな台詞だ、脳内の苗字がにこにこと笑っていて、俺も釣られそうになる。


「轟くん、水着とか持ってる?」


「……いや、持ってねぇ。」


「ならば皆で買いに行こう!事前に用意しておかなければ!」


「そうだな。」


飯田の提案に頷き、俺は浮ついた気持ちを隠すことなく口角を上げた。