心配

「と、轟くん大丈夫!?け、怪我したって冬美さんに聞いたけど、」


『お、落ち着け、平気だ。』


「おお、落ち着いてなんて……!!」


ニュースを見て、ひっくり返るかと思った。ヒーロー殺しステインと相対したのは雄英生、その中にはエンデヴァーの息子も含まれており、なんて書いてあってほんと、ひっくり返るかと。


慌てて轟家に向かい、よく飼っている猫の名前を迎えに行くと顔を合わせる冬美さんに聞けば、怪我をして今は入院中との事。


『俺は軽傷だったから直ぐに退院出来るから、……心配かけて悪かったな。』


「そ、それなら良かった…………いやもう本当に、怖くなっちゃったよ……。」


『……ふふっ、悪かった、ほんと。』


そう言って謝っているのに、何故か聞こえるのは控えめな笑い声。


「…………轟くん?」


『いや、ごめ…………あまりにお前が慌てるからおかしくて……。』


「おかしくなんて無いよ!?心配だったんだから……。」


『……あぁ、ごめん。色々落ち着いたら元気な姿見せに行くよ。』


「絶対だよ!?…………それじゃあ切るね。」


『え、もう?』


…………え?もう??


『……あ、……えっと……まだ、時間あるからって……。』


思って………………と続いた言葉に返事を返そうにも顔が熱くて、頭が真っ白でろくな言葉が思いつかない。え、と、とにかく、こんな状態で電話は続けられない、ので、


「…………ね、寝てください!!」


『えっ?』


「は、早く元気になって!!ま、……待ってます!!」


そう叫ぶようにして電話を切ってしまった。困惑していた様子の轟くん、ご、ごめん……轟くんのえ、もう?に動揺しまくるような友達でほんとごめん……。


いやでも、友達とは言え轟くんは超イケメン。イケメンにもっと話したいと思われるなんて、そんな体験出来るとは。あぁもう、顔が熱い……。





半ば強引に切られた通話。おかしな様子の苗字につい、


「っふふ…………なんだよ、待ってますって……。」


笑いが零れて零れて仕方が無い。本気で心配してくれてた、それだけでも嬉しかったのに、相も変わらず豊かな感情が顔が見えなくても伝わってきて、なんだか元気が出た。


俺がまた怪我をしたら、こうやって心配してくれるのかな。なんて想像して、嬉しく思ったが心配をかけるのは良くない。


それに、心配そうに眉を顰める苗字よりも、いつものように快活に。表情豊かな苗字に会いたいな。


それなら苗字の言う通り、治癒に専念しよう。次会った時はどんな顔するだろうか、心配だったよ!!とやはり困った顔をさせてしまうだろうか。


そんな顔も、元気そうで良かった!と笑う顔も、どちらも想像出来る。あぁ、会いてぇな。早く、早く。