「………………え?寮?」
「寮。」
「寮…………雄英って寮あったっけ……?」
「出来た。」
「出来たの!?」
なんと言う。凄いな、ここの所ヴィランに襲われがちという事で寮を建てるって。建物ってそんな簡単に建てれるのか。
「…………え!?じゃあもう会えない!?」
叫んでから気づく、寂しいのバレバレじゃないか。
「…………ふふ、……あぁ、あんまり会えなくなるな。」
「そっっ……………………かぁ…………飼っている猫の名前も寂しくなるね。」
そう言って轟くんの腕の中でごろごろ言ってる我が家のアイドル(仮)を眺める。
「苗字は?」
「うん?」
「苗字は寂しくねぇのか?」
さっきのリアクションは無視の方向で進めようとしたのに。轟くんはわざわざ掘り返して、そして少し笑っちゃってる。馬鹿にしやがって……。
「………………さ、寂しいです!!!」
「あははははは!!」
こ、堪えられねぇ!!なんて言って、爆笑する轟くん。滅多に見れないイケメンの爆笑が、自分を笑ってるなんて。こんな虚しいことある?
「酷いなぁ……恥ずかしかったから言いたくなかったのに。」
「ふふ、……ふふ、悪ぃ。」
本当に思ってる??
「まさかあんな大声で開き直ってくるとは思わねぇだろ…………ふふ。」
「うぐっ……。」
「あー…………腹痛てぇ。……俺も寂しいよ。」
さらり。いとも簡単に。
目尻に浮かんだ涙を拭いながら、さらりと言ってのけた轟くん。
ぐ、ぬぬ…………か、かっこいい……。轟くんはいつか世の中の女の子達をを虜にしてそうだ、プロヒーローという名のアイドルになってそう。
「お前と会うの好きだったしな。」
「割と頻度も高かったもんね。」
飼っている猫の名前を見ると、何?とでも言わんばかりに丸々としたおめめをこちらへ向けている。あなたが脱走するだけ私たちは会ってるって事だよ。
「あぁ。…………寮入ったら中々出られねぇと思うから、電話とかする。」
「え、いいの?」
「え、何が。」
「いや、……轟くん忙しいだろうしそんな暇無いでしょ、なんて思っちゃって。」
「別に、んな忙しくもねぇよ。…………なんなら手紙でも書こうか?」
「手紙!?」
て……手紙!?!?
なんと言う可愛い響き。轟くんからの手紙……ちょっと貰ってみたい気もするけど、貰ったら返さないとだしな……形に残る文章を語彙力の無い自分が書ける気がしない。
「お母さんにも書こうと思ってたから、別にもう1人増えても平気だ。」
お母さんに手紙!?
な、……よ、よ、良い子!!身長は遥かに轟くんの方が上だけれど、なんだか頭を撫で回したくなる。なんて良い子なんだ。
「そ、そっかぁ…………お手紙貰ったら返さないと駄目?」
「……出来れば返して欲しいけど。なんで?」
「文章を書く力に大きな差が生まれると思うんだ。」
「………………ふふっ、真面目な顔して言うから何かと思っただろ……ふふふっ!!」
いや、ほんと、マジで。私の頭の悪さ実感して貰ったと思ったんだけどな……。
「……ふふっ……そんなの気にしねぇよ。じゃあ送るからちゃんと送り返せよ。」
「えっ!?ちょ、ほんとに!?」
「あぁ。楽しみにしてるな。」
そう言って飼っている猫の名前を私に返して、家の方へ向かっていってしまった轟くん。なんてこった……。
返事の事をまだ来てもないのに、まだ寮に入ってもいないのに考えては、書けない……。と愕然としたが、
彼から送られるであろう手紙の事を考えると、少しわくわくして届く日が待ち遠しく思えた。