図書室にて
「えー、これにて今年度の委員会は終わりだ。3年間務めてくれたやつもいるな、ありがとう。お疲れ!!」
それじゃあ解散。先生の言葉に皆帰り支度を始める。
そうか、これで委員会も終わりなのか。
一つ一つ行事が、物事が終わっていく寂しさに暮れる。そうだよね、卒業はもう目前だもんね。
「……苗字。」
「あ、轟くん。」
……轟くんと顔を合わせるのも、もしかしたらこれが最後かもしれない。そう思うとなんだか寂しさが加速する。
「これで委員会最後だったんだな。」
「ね、私もびっくりした。……でももう卒業近いもんね。」
「……そうだな。」
「……3年間ありがとう。」
自然とこぼれた感謝。そうだ、轟くんと関わらなければヒーロー科ともなんの繋がりもなかったし、轟くんと仲良くなったから、委員会の色んな場面が楽しくなった。
「本当に、ありがとう。轟くんと仲良くなれて良かった。」
そう伝えると、目を見開き驚いた轟くん。
「…………俺も。苗字と仲良くなれて良かった。」
「ふふ、ありがとう!……卒業しても元気でね。轟くん絶対すぐ有名人になるから、テレビで見れる日を楽しみにしてる。」
「…………あぁ。」
「あと、轟くんがプロヒーローになって人気出たらグッズとか必ず買う!!サイン会とかあったら頑張って行こうかなぁ!」
「………あぁ。」
「勿論、本業のヴィラン退治も期待してる。轟くん、この間も凄かったもんかっこよかった。きっと皆が憧れる素敵なヒーローに」
「苗字。」
私の声を遮って聞こえた声は、いつの間にか私達以外誰もいなくなっていた図書室によく響いた。
「…………苗字。」
「え、と。どうしたの?」
「………………………………俺は、」
じわじわと赤みを帯びていく頬。目も伏せていて、彼の綺麗で長いまつ毛がよく見える。
「…………俺は、終わりにしたくない。」
「…………え?」
何を?
「卒業したら、お前との繋がりは無くなるんだって思った。……苗字は俺をテレビとかで見るって言うけど、俺は、もう見ることも出来なくなんのかって。」
「それは……。」
「そんなの、嫌なんだ。」
伏せていた瞳が私を捉える。
「……苗字。」
轟くんの男らしい手が私の腕を掴む。
あぁ、なんだか思い出すな初めて出会った日のこと。
手首を痛めてしまって、それを冷やしてくれたんだった。
思えば初めて会った日から、君はずっと優しかった。
それがいつからだったか、優しくそして甘い空気感を纏っていた。
懸命にその優しさを私に向けてくれた轟くんに、私も返したくて。
その、優しさを。…………その、
「…………好きだ。」
愛を。
「……………………え……。」
轟くんの放った言葉と、自分の中で振り返った過去が合致する。
私は、いつから?彼の思いに応えたいって、違うそれは優しさに、めいいっぱい優しさを返したくて。
でも途中から気づいていた。彼の空気感が変わっていること。
それにも、私は、返したくて。彼がくれる沢山の愛を、私も。
………………なんて愚かなんだろう、私は。
「…………悪い、急にこんなこと言って。」
「…………ううん。」
「困らせるのは分かってた、でも伝えておかないと後悔するって思ったから。」
「…………うん。」
「どうしようも無く、好きだ。離れるなんて考えたくねぇ。」
「…………うん。」
「…………隣に、いて欲しいんだ。」
「…………うんっ。」
熱い涙が溢れ出す、今になって、彼に言われて漸く気づいた。
どんな理由であろうと、彼に触れて貰えるなら嬉しかった。
どれだけ怖くても、彼を守りたかった。
どれほど生きてる世界が違うとわかってても、想うのを辞められなかった。
………………私は、ずっと前から
「苗字……?……ごめん、困ってるよな、」
「……違う、違うよ……轟くん……!」
「え?」
「…………嬉しくて、……ごめん、涙が……。」
溢れる涙を必死に拭いながら、気持ちを伝える。
「好きでした…………ずっと…………!」
「…………え。」
目を丸くした轟くん、その瞳は段々と驚きから歓喜へと色が変わり、
「……本当か?」
「本当、ごめん。気づいたのは……今だけど……。」
「今?」
「…………轟くんに言われて、嬉しくて。でもいつからだったか、轟くんと同じ気持ちでいた気がして。」
「…………そうか………………そっか…………。」
掴まれた腕を引き寄せられ、彼の腕の中へ。
「……ありがとう、すげぇ嬉しい。」
「……こ、こちらこそ!」
「苗字、」
ゆっくりを顎を掴まれ、持ち上げられる。
綺麗なオッドアイに惚れ惚れしてると、
「俺と付き合ってくれ。」
トドメを刺された気持ちだ。私は首を縦に振ると、笑みを浮かべた彼に強く抱き締められた。
「……フラれると思ってた。」
「え!?な、なんで、」
「苗字そんな素振り全然無かったから。」
「そ、それは……!ついさっき自分の気持ちにも気づいて…………轟くんに対するのは尊敬とか憧れとかだと思ってたから。」
「……でも、好きでいてくれたんだな。」
「…………う、あ、……はい。」
「大事にする、ずっと。」
そう頭を撫でられ、彼の表情を見るとなんとも慈愛に満ちていて。
「お…………お願いします!!」
私は火が出そうな顔を、彼の胸板に押し付けた。
fin.