びっくり
「え、ま、またですか?」
痛めた手首が充分に治って、暫くした頃。
「おぉ、悪いな。ヒーロー科はなんか授業が長引いてるみたいでな。あいつらの為だけに全員待たせる訳にもいかないから、渡しといてくれ。」
そう言っていつかのように私へプリントを押し付けて帰ってしまった先生。ええぇ……。
と言うかヒーロー科…………何故授業終わらせぬ…………。
私は納得のいかない気持ちを抱えたまま、家路に着いた。
◇
ほんと、前回と言いごめんね。ご迷惑お掛けしました!そう言ってB組の図書委員さんに頭を下げられ、またも逃げ出すように廊下へ飛び出す。
…………はぁ、A組。
轟くんが凄い人だけど、悪い人じゃないのはわかった。なんなら親切な方だった。イケメンで親切とか凄い。そりゃ皆好きになっちゃうよ。
でもA組に緊張してしまうのは変わらない、何故ならあの爆豪さんがいるのだから。……名前は最近知ったのだけども。
それに猛者しかいないはず、誰かの気を悪くさせてしまったら……なんて思うと今日も足が動かない。
それでも私にはプリントを渡すと言う任務があるので帰れない、すー、はー。深呼吸をして扉に手をかける。
ほら、もしかしたら前みたいにすぐ轟くんに会えるかもしれないし。ポジティブにいこう、ポジティブ。
「失礼しまーす……。」
恐る恐るA組の扉を開けて、顔を覗かせると
う、わ。体育祭で見たことある人ばっかり……!!!
衝撃からまたも体が動かなくなる、そして緊張感が高まり手汗とか冷や汗などが尋常ではない量出てくる。
どど、どうしよう。誰に話しかけても緊張してしまう、え、と、どうし
「あれ?どうしたの?他のクラスの人だよねー?」
声の聞こえた方に顔を向ける、が、顔が無い。え?なんなら首から下も無いし、手袋が浮いて…………
バタン。
「うわああ!?だ、大丈夫!?」
「ててて、てぶ、手袋がしゃべって、」
ついふらりと倒れてしまったが、急いで正気に戻り、お尻を床につけたまま後ずさる。な、なに、え、顔ないんだけど、でも話してて、え、え!?
「と、透ちゃん!急に話しかけたら驚いてしまうわ。」
「そ、そうだよ!葉隠さん見えないんやから!」
「え!?そ、そうだったね、ごめんね?」
ど、どういう事だ。葉隠さん、と言うのはこの手袋さんの名前?え?
突然手袋に話しかけられ、みるみるうちにA組の人になんだなんだと見られて、私は既にパニックだ。
ど、どうしよ、今日はもう逃げ帰ろうか、で、でも、
「……あれ、あんたこの間の。」
聞こえた声に顔を上げる。
「え?轟知り合い?」
「あぁ。委員会同じで…………って何してんだ。」
「と…………とと、ろき、さん。こ、ここ、これ。」
目の前にしゃがみこんで私を覗き込んだ轟くんに持ってきたプリントを差し出す。
「……あ、これ。またか。」
「この間、授業遅れて、こ、これなかったから、渡しておけって、いい、言われて、」
「そうか。……ありがとな。……それでなんであんたは尻もちついてんだ。」
「そ、その……びっくりしてしまって。」
「私が教室覗き込んでるこの子見つけて、話しかけちゃったんだぁ。ごめんね、びっくりさせて。」
「いい、いえ、全然、あの、」
結局この人……人?はどうなってるんだ、手袋が本体なの?
「あぁ、そういう事か。……葉隠は透明になる個性を持ってて、一応ここにいるんだけど見えねぇんだ。」
「…………こ、個性でしたか!!」
「まぁでも驚くのもわかるけどな、……立てるか?」
轟くんに手を差し伸べられ、その手を取って立ち上がる。うわ、力強い。
「何度も来させて悪いな、……えっと、」
「あ、えと、苗字です。」
「苗字か。……今度は出来るだけ行くようにするから。」
「は、はい。お願いします。……そ、それでは!!」
私は皆さんの視線に耐えられず、B組同様逃げ出すようにして廊下へと逃げた。
びび、びっくりしたぁ……透明になる個性とかあるんだ……さ、最強なのでは……?
私は未だに収まらない動悸を感じながら、C組へと帰った。