星の誘い
………………眠れない。
携帯を開けば、午前2時。うわ、よりにもよってなんでこんな時間に目を覚ますかな。
最初こそ明日は休みだから早く寝れなくてもいいや。なんて思って気長に待ってみたが、寝れたのは一瞬ですぐにまたこんな時間に起きてしまった。
もう暫く眠れそうにも無いので私は静かに部屋を出て、水分を取りにキッチンへと向かった。
水を飲み、ふと窓の外を覗けば綺麗な星空。
夜中の方が綺麗に見えるんだっけ、なんて思ってふらふら星に誘われ寮を出る。
「……す、ごい。」
日頃よりずっとずっとよく見える星。人の声も物音もしない校内は少しだけ怖かったけれど、なんだかとても新鮮でわくわくした。
とは言えこんな状態でヴィランにでも襲われたら、即死だなぁ。なんて想像して笑った。
星を見上げながら、真っ暗な道をふらふらと散歩する。
眠れないのも、たまには悪くない。私は音のない世界で1人、息をした。
◇
イメージが掴めなくてムシャクシャする。
左も右も、両方使った新技が中々、いや全く進歩しなくてイメージすらどこかへ行ってしまって、苛立ちが溢れる。
夜中になるまで考えても、何も進まなくて。このままではいけない。そう思い気分転換に外へ出た。
…………最近、苗字と会ってねぇな。
委員会も年に数回程しかない。図書室で本の整理をしたのがもう数ヶ月前なので、単純にそこから話していない。
…………………………会いてぇな。
ヒーローと言う枠からはみ出たところで笑う苗字。クラスメイト達も良い奴らばかりだし、頼りになる奴ばかりだ。でも、皆強くなる事、上を目指すことを当然のこととしている。
それは俺も同じで、当たり前だ。しかし突然止まりたくなる時もある、休みたくなる時もある。
上ばかり見てられない時だってある、下を向いて俯く時だって沢山ある。
そういった時上を目指し続けるあいつらと一緒にいるのが、突然物凄く辛くなる。
…………今が、そうなのかもしれない。
だからこそ、強さとか上とかと関係無いところにいる苗字に会いたいのかもしれない。
……会って、何を話せば良いのかもわからねぇ。でも、会いたい。
これが恋?いや、違ぇだろ。俺が求めてるのは、たぶん癒し。
だから恋じゃねぇ。…………はずだ。
「あれ?轟くん?」
聞こえた声に、頭の先から足の先、なんなら心臓までもがビクリと震え上がる。
なんで、こんなとこに。と言うかこんな時間に。
ゆっくりと振り返れば、初めて見る制服以外の姿。
「苗字……。」
偶然だね!なんて言ってこちらへ駆けてくる苗字。
先程まで恋とか、恋ではないとか考えていた為、つい意識してしまう。
恋ではない、癒しだ。そうだ、きっと。
「こんな時間にどうしたの?」
私は眠れなくて……。なんて目の前で話す苗字。
耳にかけている髪がさらりと落ちて、顔にかかる。
邪魔そうだな、そう思って伸ばした手。髪を整えてやるだけ、それだけ。
それだけ、じゃあもう駄目みてぇだ。
ゆっくりと伸ばしていた手が、苗字の腕を掴み引き寄せる。
「うわっ、」
こちらに倒れ込んできた所を抱き留め、両腕を背中に回した。
駄目だ、こんな事して良いわけない。
「と、轟くん……!?」
ほら、苗字だって嫌がってて、離してやんねぇと。
そう頭では考えてるのに体は言う事を聞かない。彼女の存在を確かめるように、どこにも行かせないように力を込めてしまう。
苗字から香るシャンプーの匂いに泣きそうになる、何してんだ俺は。こんなの嫌われてもおかしくない。
嫌われたくない、嫌われたくないんだ。苗字に嫌われたら、俺は、俺は。
……お前に恋した俺は、どうしたら良いんだ。