チャンス
「あ!」
「お。」
3年生になり、またも図書委員に任命された私。本は好きだから別に良いや、なんて気持ちで請け負うとやっぱりいた轟くん。
「今年もよろしくね。」
「あぁ。」
1年生の頃より随分仲良くなれた気がする、不思議だなぁ。同じクラスでもなく同じ学科でもない。話す機会も年に数回程度?なのに。
それは一重に轟くんの人柄が故だろう。優しく温厚な彼なら、きっと誰とでも仲良くなれる。
今年で轟くんの綺麗なお顔も見納めだ、今日はその1年の中でも貴重な1回。密かに観察でもしておこうか。
◇
「3年生はまた2年生とは違う事をやるんだねぇ……。」
「図書館に行って、本を選んでくるなんて。こんなの生徒がやってたんだな。」
「ね、ここにある本も今までの先輩達が選んできたのかな。と思うとちょっと楽しくなるね。」
そう言って楽しそうに笑った苗字。
しかしながら俺はそれどころじゃない。今から重大任務に取り掛かる。
図書館に行き、新たに図書室へ入れる本を選んでくる。これが3年生に与えられた仕事。
しかしながら昨年同様、ジャンルや行く図書館などを学科ごとに分けられている。
そう、学科ごとなのだ。このまま行けば俺はB組の奴と図書館行き。
そして苗字は俺とは違う図書館へD組の奴と行くことになる。
1年の中でも中々話せない貴重なチャンス、しかも図書館へ行くのはいつでも良いが放課後では閉まっているので、休みの日。
休みの日に、出かけられる。
このチャンスを逃す訳にはいかない、俺はどうにかして、
「あ、轟ー!」
「……なんだ?」
「この図書館なんだけどさ、私インターン先の近くだから1人でぱぱっと行ってくるよ!」
「…………お、…………おお。」
それじゃ!と図書館を出て行ったB組の図書委員。1人で行ってきてくれるのは有難い、とりあえず俺は自由になったが、
「あー!悪い、俺土曜日は補習があって……。」
「補習?……て、テストの?」
「そう……悪い!だから日曜が良いんだけど、」
「うーん、日曜だと私はここと……ここぐらいしか……。」
「……だいぶ先になりそうだな、これって期限あったっけ?」
「いや、そんなに急がなくても良いとは思うけど……。」
普通科の2人を見ると、どうやら予定を合わせるのに苦戦しているようだった。……よし。
「予定合わねぇんだったら、俺が苗字と行こうか?」
「え?轟くん、B組の人と、」
「なんかインターン先の近くらしくて、1人で行ってきてくれるらしい。」
「え!そうなの?」
「マジか!!じゃあ頼んでも良いか?」
「あぁ。」
ありがとう!!とガッツポーズをするD組の奴と同時に俺も小さくガッツポーズした。ありがとう、こちらの台詞だ。
「いつが良いんだ?」
「えっと……じゃあ今週は?空いてる?」
「あぁ、空いてる。」
「じゃあ今週行っちゃおう!」
にこにこ笑って、轟くんと学校の外に出るなんて初めてだね。と言う苗字。
あぁ、初めてだ。こんなに一緒にいたいと思ったのも、チャンスを逃したくないって思ったのも。
「あ、何かあったら連絡手段いるよね……連絡先交換してもらってもいい?」
「…………あぁ、勿論。」
口元が緩みそうになる、油断するな。苗字はそういう奴だろ、急に来るんだ、気をつけろ。
スマホに登録された苗字名前と言う連絡先。
…………駄目だ。にやける。
俺はなんとか平然を装い、来る週末まで過ごした。