あの子の話
「お、やっと来たなー!!」
そんな声に顔をあげれば、ピクシーボブがにこにこ笑ってこちらを見ていた。
生憎……こちらは全く笑える状況では無いんですが……?
あれからも魔獣たちは立て続けに襲ってきて、途中で何度もガス欠になった私は何度も轟くんから氷を供給してもらって、なんとか今も自分の足で立てている。
体も、そして何度もガス欠になる不甲斐なさから心もボロボロになって、とてもじゃないが笑えない……。
なんて情けないんだ……最後の方なんて轟くん「あぁ、氷か?すぐ出すから待ってろ。」なんてペットに餌あげる感覚で氷くれてて……ほんとごめん……。
「特にそこの4人!!判断の速さは実体験の賜物かにゃ?」
そう言われたのは轟くんと緑谷くん、飯田くんに爆豪くん。
彼らはうちのクラスでも反応速度や攻撃力も高い人達だ、ほんと、大層な個性持ってて情けない……見習わなければ……。
「……あと、そこの貴方。」
そう言われてピクシーボブを見ると、先程とは打って変わって真剣な眼差し。
「……貴方の個性、母のヒーロー名とよく似ているわ。」
母のヒーロー名。
なんとも懐かしい名前に身震いした。
「その表情、やっぱり……。」
「ピクシーボブ。」
そこに相澤先生が割り込んできた。
「この話はちゃんと俺が、……こいつらと話すつもりだ。」
「えっ。」
「……苗字さん、よね。」
「は、はい。」
「…………自分を大切にしてね。」
そう言われて、泣き叫ぶ母の姿を思い出した。
「……はいっ。」
私は笑った、大丈夫。心に決めてます、母のようにはならないと。
◇
「……なんの話だったんだろう。」
緑谷が呟く、苗字と先生達にしか分からない話。
「……さぁな。」
ただわかったのは、苗字が心配されてること。自分を大切に、そう言われてた。
夕飯を取り終え、入浴も済ませあとは寝るだけ。そこまで来て今日を振り返るとやはり気になるのはあの会話。
「何か抱えてるのかなぁ……支えてあげれるといいんだけど……。」
「……推測するのは勝手だが、ズケズケと入り込むのはやっぱり辞めた方がいいと思うぞ。」
「うっ……。」
「お前そういう節があるからな。」
「うぅっ……気をつけます……。」
俺はそれをキッカケにあいつの事もお母さんのことも思い出せた訳だけど、誰にやっても良い結果になるとは言えない。むしろ悪い方向に転がる方が目に浮かぶ。
なんとも直球に、相手の感情へと入っていく友人を止めたくなるのは仕方の無い事だった。