個性伸ばし

「う、うわ……大変そうだね、轟くん。」


反射というかなんと言うか、炎からは遠ざかりたくなる質なので若干遠くからそう話しかける。


「あぁ……熱かったり冷たかったり……体壊しそうだ。」


そう言いながらお風呂の温度を上げたり下げたりしてる彼は、個性を連続して使っているからか疲れているようにも見えた。


「大変そうだ、と言ってるがお前はここで轟と一緒に訓練だ。」


「え!?」


「お前の個性は氷。まず暑い現場でも多少なりとも形状を保てるようにしろ。」


「んな無茶な!?」


「より冷たい氷を精製しろ。次に温度変化に弱いので暑い涼しいを繰り返してる轟の隣で造形し続けろ。」


「……は、はい。」


「あと、轟の氷を食べるのは禁止な。」


「え!?」


「あとは体力の増加。すぐバテるからなお前。以上、励め。」


そう言い残して先生は別の人の元へ行ってしまった。あ、暑いところで氷を溶かすなって無理過ぎる……自然の摂理じゃん……。


「……まぁ、頑張れ。」


ぽん。と頭に轟くんの手を置かれ、少しだけやる気が出た。


よっしゃ。と轟の入ってるスチール缶の隣に座り込み、造形を始める、が


「あああ!!熱い!!熱いよ轟くん!!!」


「悪い。」


「ささ、寒いよ轟くん!!」


「なんでだ。」


お前の個性氷だろ。と言ってくるが、私だってちゃんと人間だ。他の人よりほんの少し寒いのに強いのであって、氷まみれにされても平気な訳じゃない。


「あああ!!!熱いいいい!!」


造形した武器達は一瞬にして水だ。精神的ダメージデカすぎる。


「…………轟くんのことが嫌いになりそう。」


「え、…………そ、れは困るな。」


「じゃあもうちょっと温度調節上手になって……。」


「……善処する。」


見上げた轟くんは、ふぅ、と息をついていてお風呂に入っているのもあり髪や肌が濡れていて色っぽかった。な、なんか見てはいけないものを見た気分。


ふと造形を繰り返しながら目に入った緑谷くん。


何やら謎の動きをした後に、虎さんへ殴り込み、ボコボコにされてる。もはやなんの特訓かわからない。


爆豪くんはずっと叫んでる。クソがあああ!!とか。元気そうだ……。


「おい、」


「っえ?」


「造形出来てねぇぞ、なんかぐでんぐでんになってる。」


轟くんに言われて手の中を覗けば、小型の鷹を作っていたはずが散々遊んだ後の粘土みたいになってる。


「うわ!?」


「……お前も個性で上手くいかないことあるんだな。」


「あ、あるよそりゃ!!」


「昨日の話聞いて、お前のこと沢山知った。」


「う……そ、そうだよね。」


「でも一つだけわからなかった。」


「うん?」


「なんでそんなに戦い慣れてる?」


「そ、それは……たぶん、お母さんが沢山稽古つけてくれたのと、お母さんが戦う姿を沢山生で見に行ったから、かなぁ。」


私の憧れはお母さんだ。だから、稽古も苦しくても楽しかった。


見に行くのはもっと好きだった。かっこよくて、氷がキラキラ煌めいて綺麗だったから。


だから、


「……私のお母さんは、轟くんのお父さんみたいに有名なヒーローでは無かったけれど、私の憧れだった。だから、お母さんみたいになりたくて、お母さんのように戦いたくて稽古も必死になってた。」


きっとお父さんに育てられて、ここまでの強さを手に入れたであろう轟くんに言うのは気が引けたが、そう伝えた。


私達の違いはただ1つ、師を尊敬していたか。


「…………そうか。」


「え、と。ごめん。」


「何がだ。」


「……轟くんがお父さんと上手くいってないって知ってたから……その、」


「それはただ、苗字のお母さんが立派だっただけだろ。親父とは違ぇ。誇って良い。」


母を誇って良い。


散々言われた、個性因子を失う技なんて使わなければ良かったのに。人を救うべきヒーローが自害だなんて。


世間の声は厳しくて、でも私はお母さんを誇っていた。例えこの目で最期を見届けたとしても。


それを、誇って良いんだよと轟くんは言ってくれる。


「…………ありがとう。」


「ん。」


「ちょっと轟くんの事好きになった。」


「……えっ。」


「えっ?」


え、い、嫌だった?


「な、なんかごめん。」


「い、や別に……。」


微妙に気まずくなってしまって首を傾げる。え、私そんなに轟くんに嫌われてたの。よくここまで会話してくれたな。


いやでも嫌われたら困るって………あれ。


彼の気持ちがわからず、顔を覗き込むようにして見上げると、そこには耳まで赤くした轟くんがいて。


逆上せたと思った私が彼に氷をぶつけるまであと少し。

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