対峙
「今日の夜は肝試しをするよおお!!」
「き、肝試し……。」
「苦手なのか?」
「苦手、かもしれない。」
「どっちだよ。」
ふはっ、と軽く笑った轟くんは昨日に比べて温度の調節が上手くいっているらしく、ここら一帯の温度も割と安定していた。
かく言う私はその安定している温度で、お風呂が暖かい温度で造形を崩さぬよう集中していた。が、
「肝試しってたぶん個性とか使ってくるよね?」
「どうだろうな。」
「いやぁ…………やだなぁ、暗い森とか怖そうだし……。」
「流石に1人で回ることは無いだろ。」
「かな?くじ引きとか?自分達でペア作るとかそう言うのかな。」
「さぁ……。」
「轟くん、もし自分達でペア作るんだったら、私と組んでくれませんか。」
「えっ。」
轟くんとか絶対何にもビビらないじゃん。お化けとか虫とか全てに勝ちそう。と言うか反応しなさそう。
「だ、駄目っすか。」
とは言え正直昨日からずっと共に訓練してるが、彼の心情が分からなすぎて困ってる。とりあえず昨日氷をぶつけた時に怒ってた事しかわからなかった。
「いや、いいけど。」
「本当?ありがとう!」
「いや…………なんで俺なんだ。」
「え、…………轟くんに怖いものとか無さそうだから……。」
「……俺の印象すげぇな、最強じゃねぇか。」
「え、轟くんはとっくの昔からイケメンの最強!ってイメージだけど……。」
と言うかこのイメージはクラスメイトのほとんどに共通するものなのでは?クラス公認イケメンだし、うちのツートップだし。
確実に爆豪くんより優しいし、冷静だし。正直入学当初はトゲトゲしていた部分もあったが、それも丸くなり今となっては印象はこれ以上無く良いのだが。
「…………轟くん?」
返事が無いことが気になり、造形物から目を離して見上げる。するとまた昨日のように耳まで赤くなっている轟くん。
「え、…………えっと、大丈夫?」
昨日はこの状態を見て氷を噴出させたが、自分の炎で氷を溶かした轟くんに……お前な!!と怒られた。解せなかった。
とりあえず学習したので聞いてみると
「…………あぁ。」
顔は逸らされてしまったが、大丈夫なようだ。
◇
「…………あ、苗字さん!僕と一緒だね。」
声をかけられ振り返ると、同じ番号を持った緑谷くん。
良かった!とりあえず私より頼りになる人とペアになれた!!
「うん、よろしくね!頼りにしてる!!」
「え!?た、頼りにって……何を……。」
「私、ちゃんとビビってしまうので!!引きずってでもゴールして下さい!!」
「りょ、了解しました!!」
◇
ぎゃあああああ!!!ぎゃあああああ!!!と響き渡る夜の森。怖過ぎない?怖過ぎるよ!!
「苗字さん?」
「うん?」
「まだ僕達の番始まってないよ?」
「知ってるよ?」
「…………。」
わかる、わかるよ緑谷くん。何が言いたいのかわかってます。
まだ始まってすらいないのに、全身ガタガタ震わせて腕に巻き付くな、って言いたいんだよね。わかるよ、すっごいわかる。でも自分でもなんでこんなに震えてんのかちょっとわかんなくてさ。
「ごめんね!!」
謝ることしか出来ないや!!
それに対して、若干頬を赤らめながらも苦笑いをした緑谷くんは優しいと思う。
そんな彼の表情を眺めていると、目に入った黒煙。
…………黒煙?
「み、緑谷くん、あれ、」
「……森が、燃えてる……?」
そうこの場にいた全員が認識した瞬間、ピクシーボブは地に伏せられていた。
なんで、万全の体制じゃなかったの。
緊張感の走る中、私は絶望した。何故ここにヴィランがいるのか、と。