戦慄

「皆、施設まで走って!!」


もう肝試しにガクガク震えている場合ではない、足を叱咤し前に動かす、が。


「緑谷くん!?どこに行くの!!」


「ごめん、苗字さん!!先に戻ってて!!」


緑谷くんは個性を発揮し、施設とは逆方向へ飛んでいってしまった。こんな時に何をしてるんだ彼は、と若干苛立ちを覚えつつも私は前へ前へと足を動かす。


しかし


「おい!!マグネ!!こいつ確保対象だ!!」


「あら!!ほんとね、いきなり出会えるなんてラッキー!」


「苗字!!逃げろ!!」


かくほ、たいしょう?


ヴィラン達の言葉を理解する間も無く、虎さんに言われて弾けるように足を動かした。


何それ、確保対象って、何、


自分が、狙われてる?狙われてるのはオールマイトじゃなかったの?


分からない事だらけで、頭が混乱する。自分が逃げるべきなのは分かるけど、どうして狙われてるのかわからなくて、


それでもただ1つ、私の中では揺らがなかった。


施設へと向かう途中見えたのは鮮血。


血が舞っていて、見えたのは梅雨ちゃん。


逃げるべき、逃げないと。頭ではわかってる、けど、


仲間が襲われていて、見捨てるなんて出来やしない。


悲しきかな、ヒーローを志すその信念が私を施設から遠ざけた。





『狙いはかっちゃん!!それと苗字さん!!その2人は戦闘を避けて逃げて!!』


爆豪くん……?


なんで、と思ったが今は目の前にいるヴィランを撃退しなければ。


「あれ?あなた、確保対象ですよね。」


「……みたいですね。」


目の前に佇む金髪の女性を警戒する、この子は先程梅雨ちゃんを切りつけた。恐らく怪我を負ってる麗日さんもこの人に。


「ふふ、私の手柄になってくれるんですか?嬉しいです!」


そう言うとナイフを持ってこちらに駆けてくる、その太刀筋は一切の躊躇なんてなく、人を傷付けることになんの感情も沸いてないのだと感じ、


「……気味が悪い。」


私は嫌悪感しかこの女性に感じなかった。


梅雨ちゃんと麗日さんの前に盾を置き、自分にはダガーを精製。


彼女の太刀筋はめちゃくちゃなもので案外動きは読みやすかったが、あまりに狂っていて、


「ふふ、捕獲の前に血をください!!」


私を切りつけることで頭がいっぱいになっているようで、少しだけ怖気付いた。これが狂っている人、ヴィラン。


USJで理解した気になっていたが、まだまだ甘かったようで彼女を避けながら、こちらも攻撃を繰り出しながらも震え出しそうになるのを堪えていた。


私が倒れたらまた梅雨ちゃん達の方へ向かう、2人は既に怪我を負わされていて危険だ。


私は一息に仕留めるつもりで、強く踏み込み、


懐へ潜り込み、腹を切り裂いた。


しかし、その隙に彼女も私の肩にナイフを振り下ろしていたようで


「ぅ、ああ!!!」


「いててて…………あ、血が流れてますね……頂きますね、」


噴き出すように流れる血を手で抑えながら、腹から血を流しながらもこちらへ寄ってくる女性に唇を噛み締めてると、


刹那。


「…………邪魔が、入りました。」


私と彼女の間に割入ってきたのは、氷壁。


轟くんの、氷。


「苗字!!」


「と、とどろき、くん……。」


「大丈夫か!?」


「苗字さん!?その怪我……蛙水さんも麗日さんも、」


良かった、助けに来てくれた。


心配そうにこちらを覗き込みながら、苗字!!苗字!!!と叫ぶ轟くんの声を最後に私の意識はぷつりと切れた。

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