平和の象徴
「うっ…………うぅっ……。」
あまりの激痛に目を覚ます、呼吸をする度にヒュー、ヒュー。と今にも死んでしまいそうな音がしている。
霞んだ視界の中映ったのは、薄暗いバーのような光景。
「…………ここ、は……。」
「あ、目が覚めたみたいだね。苗字名前。」
声の方に顔を向けると、そこには気味の悪い手を顔に貼り付けた男がいた。
あれ、この人……ヴィランの資料で、見た…………。
「…………し、死柄木弔……。」
「あ、知ってたんだ。…………今お前らがここにいるのはちゃんと理由がある。」
お前ら?
鈍る体で隣を見ると、そこには爆豪くんがいた。
「ばっ、……ばくご、くん……。」
「喋んな、死ぬぞ。」
確かに、死にそう。
ドクドクと肩からの出血は治まらず、今も尚量が減ったとは言え流れ続けている。
「爆豪はこっちにいるべき存在だ、そんでお前は個性を寄越せ。」
「…………え?」
個性を、寄越せ?どうやって。
「お前の力は有益だ。特に絶対氷結。ある程度のヒーローであれば皆が知ってる切り札を兼ね備えた個性。」
「そんな…………便利なものじゃ……。」
「命が惜しい奴からしたらな。でも俺達はそれが欲しい、いざとなれば必ず逃げ切れる、必ずやり直せる力が欲しい。」
何を言ってるんださっきから。
言っている意図が全くわからなくて、首を傾げる。
「つまり、お前の個性を他人に植え付ける。そいつを俺達の盾にする。そういう事。」
――何を、言ってるんだ。
「人を…………盾に…………?」
「俺達はやっぱりまだ戦力が足りない、ヒーローに追い詰められる場面も多くある。その時にお前の個性は有効活用出来る。」
「おい、氷野郎。まともに聞いてんじゃねぇよ。」
爆豪くんの声にハッとする。そうだ、この人はヴィラン連合のトップ。狂ってないわけが無い。
「まぁ聞くも聞かないも自由だよ、どうせ個性を抜き取ればお前に用事は、」
その続きは爆発音と爆煙に飲まれ、聞こえなかった。
そして何が起こったのかと、出血多量で霞む視界の中見えたのは平和の象徴。
「…………よく頑張ったな。」
拘束を取られ、オールマイトに爆豪くん諸共抱き締められる。
私はそのまま、爆豪くんのおい!!苗字!!おい!!!と言う声を聞きながら
あれ……もしかして初めて苗字を呼んでくれたのでは…………なんて思いながら、鈍くだるい体の力は抜けて意識も落ちた。