準備と心と氷と
「緑谷くん!!切島くん!!」
「麗日さんと、梅雨ちゃんも。お、おかえり!!」
心配で仕方なかった彼らを出迎える、何も話してくれなかった、何も話せなかった彼らを労いたくて。
「怪我とかは!?大丈夫!?」
「うん!!平気だよ、ごめんね心配かけて。」
「ほんとだよ!!麗日と梅雨ちゃんがすんごい事に巻き込まれてるって、ニュースで知ったんだよ!?」
「話せなかったのは仕方ないけど……最近ピリピリしてんなぁ、と思ってたから……そういう事だったんだね。」
芦戸さんと耳郎さんと共に頷く。本当に、本当に
「……お疲れ様…!!」
◇
「……ふふっ。」
「?楽しそうだな。」
「うん、文化祭。皆の提案聞いてるだけで楽しかった。」
学校帰り、たまたま轟くんと一緒になったので、寮までの道を並び歩く。
「そうか?」
「うん。楽しみだなぁ!何をやったとしても皆とだったらきっと楽しいね。」
「……そうだな。」
◇
「演出?」
「あぁ!苗字ならダンスの方でも良いと思うけど、氷の造形すげぇ綺麗だし、轟と一緒に演出入ってくれよ!!」
「そういう事なら……!」
少しだけダンスの方が楽しそうだな、なんて思ったけれどせっかく頼って貰えたんだ。力を貸してあげたい。
「にしても、演出ってどうしたら?」
「それをこれから考えていこうぜ!女子の意見としても、頼りにしてるぜ苗字!!」
「お、おす!!」
◇
「よし、やるぞ苗字。」
「おす!!」
「なんだそれ、切島から移ったのか?」
ふふ、と息を漏らしたように笑われる。今日も轟くんはかっこいい。
「な、なんか気合い入っていい感じなの。それよりやろう!」
轟くんとの演出練習。切島くんの考えた動きや氷の発現を練習する。
私の氷は轟くんのように広範囲には出来ないので、ただ造形を生み出しても落ちてしまう。
そうなるとステージに乗せるか、上部から吊り下げるか。
ステージだと皆がいるのであまり置くには向いてない、なので轟くんに天井から氷の土台を作ってもらい、そこから派生させて造形物を吊り下げる算段だ。
「よし、やるぞ。」
「おす!」
パキィ、轟くんの氷が辺り一面に敷き詰められる。
その氷に触れ、力を込めて造形する。
模すのはステージに立つ皆が持っている楽器や、音符。ステージとの印象に差がないようポップに見えるよう、丸っこいシルエットを意識する。
「……うーん、む、難しい。」
「……なんか、尖ってんな。」
「日頃攻撃手段として、尖ったものばっかり作ってるから……。」
ダガーとか……ライオンとか……。
中々丸みを帯びた形状のものなんて作らないし、そもそも殺傷能力が高ければ問題ないので、その他の部分は凝って作らない。
なので雑に造形していた部分がここで露呈する、は、恥ずかしい……よりによって轟くんの前で……情けない……。
「造形の方は自分で練習しておくよ……、ぶら下げる分に強度とかは問題なさそうだから、この案で行けそうだね!」
「あぁ。……良かったら練習付き合うぞ?」
「え!!……うん、もうちょっと私が上手になったらお願いしようかな。」
「ん、いつでも言ってくれ。」
片付けよう、そう言って左半身から火を放ち氷を溶かしていく轟くん。
当たり前のように言っているが、やっぱり彼は優しい。
優しくて、かっこよくて、強くて。
『毎日お前の見舞いに来てた。』
『でも轟ちゃん、名前ちゃんの事いつも見てるわよ。』
勘違い、しそうになって。
…………もう、遅くて。
ゆらゆら揺らめく炎の中、静かな瞳は溶けゆく氷を眺めていて。
そんな氷のように、私の氷で固めた感情が溶け出てきて。
「…………好き、だなぁ。」
ゴオオオッと言う音に掻き消されるとわかってて音にした、私はなんて卑怯なんだろう。