準備と心と氷と

「緑谷くん!!切島くん!!」


「麗日さんと、梅雨ちゃんも。お、おかえり!!」


心配で仕方なかった彼らを出迎える、何も話してくれなかった、何も話せなかった彼らを労いたくて。


「怪我とかは!?大丈夫!?」


「うん!!平気だよ、ごめんね心配かけて。」


「ほんとだよ!!麗日と梅雨ちゃんがすんごい事に巻き込まれてるって、ニュースで知ったんだよ!?」


「話せなかったのは仕方ないけど……最近ピリピリしてんなぁ、と思ってたから……そういう事だったんだね。」


芦戸さんと耳郎さんと共に頷く。本当に、本当に


「……お疲れ様…!!」





「……ふふっ。」


「?楽しそうだな。」


「うん、文化祭。皆の提案聞いてるだけで楽しかった。」


学校帰り、たまたま轟くんと一緒になったので、寮までの道を並び歩く。


「そうか?」


「うん。楽しみだなぁ!何をやったとしても皆とだったらきっと楽しいね。」


「……そうだな。」





「演出?」


「あぁ!苗字ならダンスの方でも良いと思うけど、氷の造形すげぇ綺麗だし、轟と一緒に演出入ってくれよ!!」


「そういう事なら……!」


少しだけダンスの方が楽しそうだな、なんて思ったけれどせっかく頼って貰えたんだ。力を貸してあげたい。


「にしても、演出ってどうしたら?」


「それをこれから考えていこうぜ!女子の意見としても、頼りにしてるぜ苗字!!」


「お、おす!!」





「よし、やるぞ苗字。」


「おす!!」


「なんだそれ、切島から移ったのか?」


ふふ、と息を漏らしたように笑われる。今日も轟くんはかっこいい。


「な、なんか気合い入っていい感じなの。それよりやろう!」


轟くんとの演出練習。切島くんの考えた動きや氷の発現を練習する。


私の氷は轟くんのように広範囲には出来ないので、ただ造形を生み出しても落ちてしまう。


そうなるとステージに乗せるか、上部から吊り下げるか。


ステージだと皆がいるのであまり置くには向いてない、なので轟くんに天井から氷の土台を作ってもらい、そこから派生させて造形物を吊り下げる算段だ。


「よし、やるぞ。」


「おす!」


パキィ、轟くんの氷が辺り一面に敷き詰められる。


その氷に触れ、力を込めて造形する。


模すのはステージに立つ皆が持っている楽器や、音符。ステージとの印象に差がないようポップに見えるよう、丸っこいシルエットを意識する。


「……うーん、む、難しい。」


「……なんか、尖ってんな。」


「日頃攻撃手段として、尖ったものばっかり作ってるから……。」


ダガーとか……ライオンとか……。


中々丸みを帯びた形状のものなんて作らないし、そもそも殺傷能力が高ければ問題ないので、その他の部分は凝って作らない。


なので雑に造形していた部分がここで露呈する、は、恥ずかしい……よりによって轟くんの前で……情けない……。


「造形の方は自分で練習しておくよ……、ぶら下げる分に強度とかは問題なさそうだから、この案で行けそうだね!」


「あぁ。……良かったら練習付き合うぞ?」


「え!!……うん、もうちょっと私が上手になったらお願いしようかな。」


「ん、いつでも言ってくれ。」


片付けよう、そう言って左半身から火を放ち氷を溶かしていく轟くん。


当たり前のように言っているが、やっぱり彼は優しい。


優しくて、かっこよくて、強くて。


『毎日お前の見舞いに来てた。』


『でも轟ちゃん、名前ちゃんの事いつも見てるわよ。』


勘違い、しそうになって。


…………もう、遅くて。


ゆらゆら揺らめく炎の中、静かな瞳は溶けゆく氷を眺めていて。


そんな氷のように、私の氷で固めた感情が溶け出てきて。


「…………好き、だなぁ。」


ゴオオオッと言う音に掻き消されるとわかってて音にした、私はなんて卑怯なんだろう。

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