みんなの憧れ

«ショート、昨日3件の人命救助!!ヴィランに圧勝!!»


そんな記事を読み、笑みを浮かべる。今日も今日とてかっこいいなぁ轟くんは。


「苗字先輩!!この記事どうですか?」


「うん、大丈夫だと思う。編集長に出しとくよ。」


「ありがとうございます!!」


嬉しそうに笑った後輩ちゃんに笑いかけ、データを編集長へと飛ばした。





「へぇ……今度は化粧品とコラボか…………。」


編集部に集まる情報へ目を通し、ふむ。と頷く。


ここはとある出版社。芸能人や世の中に対する記事も書くが、何よりうちで人気なのはヒーロー達が中心の記事。


今をときめくヒーロー。ヒーロー自体は以前から人気が高かったが、今は更に優秀な若手ヒーローが多く輩出され、人気の高まり具合が物凄い。


その中でも人気なデクやショート、ダイナマイトなどは様々なメディアに取り上げられ、ファンに求められるような形で、雑誌にグラビアとして掲載されたり、化粧品や洋服ブランドなどとのコラボ商品なのが発売されたりと、もはやアイドルのような人気ぶりだ。


街中を歩いているだけでも、ビルに映る大型モニターに彼らの広告が流れていたりして、本当に、同じ教室で授業を受けてたなんて信じられない。


「どうしたの?苗字ちゃん。」


「……あ、いえ。なんでもないです、編集長。」


「あ、それ。今度はショートが化粧品とコラボするんだってね!絶対馬鹿みたいに売れるわよ。」


「ですね、女性人気凄いですから。」


「……ねぇ、前々から気になってたんだけど。」


「はい?」


「会いたいなって、思わないの?」


編集長の言葉をゆっくり反芻して、理解して、飲み込んで、首を横に振った。


「思いません、もうあの頃とは皆違うので。」


私が元雄英ヒーロー科所属だった事を知ってるのは、編集長のみ。あとの人には特に何も話していないので、きっとどこかの普通科辺りから来たと思われているだろう。


編集長は履歴書を見られてることもありバレていたが、逆にそれを強みに取ってもらえて、この編集部に連れてこられた。


「……そう、まぁあなたがそう言うなら気にしないわ。さて、仕事よ苗字ちゃん。今回はこのショートコラボの化粧品の紹介ページ。それに伴うショートの魅力についてをメインとして推していきたいわ。」


「了解です。」


私は、私の思うように記事を書かせてもらっている。


彼らの魅力、強み、人気のワケ。それらを世論的に見てでは無く、高校生の頃から。そして全員のデビュー時から、追い続けた私の思うように文字を起こす。


しかし彼らに存在を知られたくないことも事実なので、結びには偽名を使って筆者とさせてもらっている。


若干世論とズレていることもしばしばあるが、説得力があると、面白い見方だと言ってくれる人も多くて、人気もあるらしく、編集長にはやりたいようにやってくれ、なんて言われている。


しかしながら、批判的な意見もある訳で。以前ショートとクリエティの熱愛報道があった際は、写真を見て、そして彼らを張り込んで、あとは私の記憶と彼らの否定的なコメントから記事として、熱愛に対して否定的な文章を起こした。


だがそれは、筆者の思い込みだ。写真があるんだぞ。なんて叩かれたりもして、少し落ち込んだ記憶もある。


けれどそれらの記事はヒーロー事務所などからは高評価で、実際にエンデヴァーとウワバミの事務所からは感謝の文章が送られてきた。


是非記事を書いた人に会わせて欲しい、なんて言われた時は編集長と大慌てして、お言葉だけで充分ですー!!なんて言って言い逃げしたような。


そんなこんなでなんとか編集者として上手くやってこれている、ヒーローじゃなくても、ヒーローになれなかったけれど、意外と私は元気に生きられている。


天涯孤独、有名校ヒーロー科入学も、個性を失い退学。


まぁそこらの人々からしたら、たぶん、かなり不幸にも見えるだろう。でも、


『強く優しいヒーロー、ショート。彼の魅力はどこにあるのか?』


そんな見出しで書き進める、私は凄く楽しいよ。


今でもあなたと共にいるような感覚になれるんだ、轟くんの活躍、メディアでの言葉や行動。全てを見てきて、元気そうで相変わらずで笑顔にさせられる。


だからこれ以上は望まない、私にとってのヒーローはなりたいものじゃなくて、書くものへと変わったのだから。

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