みんなの憧れ
«ショート、昨日3件の人命救助!!ヴィランに圧勝!!»
そんな記事を読み、笑みを浮かべる。今日も今日とてかっこいいなぁ轟くんは。
「苗字先輩!!この記事どうですか?」
「うん、大丈夫だと思う。編集長に出しとくよ。」
「ありがとうございます!!」
嬉しそうに笑った後輩ちゃんに笑いかけ、データを編集長へと飛ばした。
◇
「へぇ……今度は化粧品とコラボか…………。」
編集部に集まる情報へ目を通し、ふむ。と頷く。
ここはとある出版社。芸能人や世の中に対する記事も書くが、何よりうちで人気なのはヒーロー達が中心の記事。
今をときめくヒーロー。ヒーロー自体は以前から人気が高かったが、今は更に優秀な若手ヒーローが多く輩出され、人気の高まり具合が物凄い。
その中でも人気なデクやショート、ダイナマイトなどは様々なメディアに取り上げられ、ファンに求められるような形で、雑誌にグラビアとして掲載されたり、化粧品や洋服ブランドなどとのコラボ商品なのが発売されたりと、もはやアイドルのような人気ぶりだ。
街中を歩いているだけでも、ビルに映る大型モニターに彼らの広告が流れていたりして、本当に、同じ教室で授業を受けてたなんて信じられない。
「どうしたの?苗字ちゃん。」
「……あ、いえ。なんでもないです、編集長。」
「あ、それ。今度はショートが化粧品とコラボするんだってね!絶対馬鹿みたいに売れるわよ。」
「ですね、女性人気凄いですから。」
「……ねぇ、前々から気になってたんだけど。」
「はい?」
「会いたいなって、思わないの?」
編集長の言葉をゆっくり反芻して、理解して、飲み込んで、首を横に振った。
「思いません、もうあの頃とは皆違うので。」
私が元雄英ヒーロー科所属だった事を知ってるのは、編集長のみ。あとの人には特に何も話していないので、きっとどこかの普通科辺りから来たと思われているだろう。
編集長は履歴書を見られてることもありバレていたが、逆にそれを強みに取ってもらえて、この編集部に連れてこられた。
「……そう、まぁあなたがそう言うなら気にしないわ。さて、仕事よ苗字ちゃん。今回はこのショートコラボの化粧品の紹介ページ。それに伴うショートの魅力についてをメインとして推していきたいわ。」
「了解です。」
私は、私の思うように記事を書かせてもらっている。
彼らの魅力、強み、人気のワケ。それらを世論的に見てでは無く、高校生の頃から。そして全員のデビュー時から、追い続けた私の思うように文字を起こす。
しかし彼らに存在を知られたくないことも事実なので、結びには偽名を使って筆者とさせてもらっている。
若干世論とズレていることもしばしばあるが、説得力があると、面白い見方だと言ってくれる人も多くて、人気もあるらしく、編集長にはやりたいようにやってくれ、なんて言われている。
しかしながら、批判的な意見もある訳で。以前ショートとクリエティの熱愛報道があった際は、写真を見て、そして彼らを張り込んで、あとは私の記憶と彼らの否定的なコメントから記事として、熱愛に対して否定的な文章を起こした。
だがそれは、筆者の思い込みだ。写真があるんだぞ。なんて叩かれたりもして、少し落ち込んだ記憶もある。
けれどそれらの記事はヒーロー事務所などからは高評価で、実際にエンデヴァーとウワバミの事務所からは感謝の文章が送られてきた。
是非記事を書いた人に会わせて欲しい、なんて言われた時は編集長と大慌てして、お言葉だけで充分ですー!!なんて言って言い逃げしたような。
そんなこんなでなんとか編集者として上手くやってこれている、ヒーローじゃなくても、ヒーローになれなかったけれど、意外と私は元気に生きられている。
天涯孤独、有名校ヒーロー科入学も、個性を失い退学。
まぁそこらの人々からしたら、たぶん、かなり不幸にも見えるだろう。でも、
『強く優しいヒーロー、ショート。彼の魅力はどこにあるのか?』
そんな見出しで書き進める、私は凄く楽しいよ。
今でもあなたと共にいるような感覚になれるんだ、轟くんの活躍、メディアでの言葉や行動。全てを見てきて、元気そうで相変わらずで笑顔にさせられる。
だからこれ以上は望まない、私にとってのヒーローはなりたいものじゃなくて、書くものへと変わったのだから。