綺麗
今日も今日とてパソコンに向かい、文字を起こす。
皆に寄り添う記事が書きたい、彼らが健やかにヒーロー活動出来るように。
皆を救うヒーローを追い詰めるような記事ではなくて、彼らを称える記事を書きたい。
そんな一心で仕事に明け暮れていると、
「先輩?まだ帰らないんですか?」
「……え?」
帰り支度を済ませた後輩ちゃんに言われて時計を見ると、22時を回っていて、しまった。なんて声にしてしまう。
「いや、もう帰るよ。時間見てなかった。」
「マジですか、先輩本当に仕事好きですよねぇ。」
お先でーす!と元気に退社して行く彼女を見送る。
仕事が好きなんじゃなくて、ヒーロー達が……特に元雄英高校1-Aの皆が………………その中でもショートが好きなんですけどね。
なんて、その好きがただのファンとしてじゃないなんて、本当に口が裂けても言えないし、彼と恐らく想いあってたのは何年前やねん。と言われてもおかしくない程の時間は経っていて。
結婚なんて程遠く、今はまだ仕事に没頭するしか出来ない駄目な女なのだと、痛感させられた。
会社を出て、今日はご飯作る元気も時間も無いしコンビニで買って帰ろうと、コンビニへと入る。
すると目に入った雑誌に思わず足を止める。
な、なんで、こんなとこに、いや、う、売れるのはわかるけど、これは、ちょ!!
傍から見たら恥ずかしいのは私の方だ、ただの雑誌に赤面して、距離を取ってる私の方。
しかしながら私が見たのは、上半身裸で雑誌の表紙を務めている轟くんで。い、いや、ショートで。
うお、か、かっこよ…………。と思ったのも束の間。コンビニを出る頃にはエコバッグの中にご飯と共に、雑誌は詰め込まれていて頭を抱える。本能に忠実かよ……。
帰ってからその雑誌を顔から熱が出そうなほど赤面しつつ、全てのページ読んだのは、一人暮らしだから出来たことだろう。
◇
「先輩って、彼氏作らないんですか?」
「…………うん?」
そもそも彼氏いない、なんて話したっけ。
「見てればわかりますよぉ、いつも夜遅くまで会社に残ってるし。休みの日はぐーたら家で過ごしてるって言ってたし。」
「うぐっ……。」
「恋愛とか、興味無い感じですか?」
興味無い、わけ、全然無いんだけど、
もはや手の届かない場所へいる人に、気持ち悪い年数片想いしてます、なんてここで言ったら私の社会的地位は無くなるのでは?
「…………そ、だね。今はいいかも。」
「ええ?そんなこと言ってる間にすぐおばさんになっちゃいますよ?」
「う、うがっ……。」
「それに、先輩綺麗なのに勿体ないですよ。彼氏作ろうと思えばすぐ作れちゃいそうだし。」
綺麗、か。
「……そんなことないよ。」
ネイルの施された爪先を見つめる。
ランチを食べながら、テーブルに置いたスマホに映る自分の顔を見つめる。
汗水垂らして、泥や砂埃で汚れながら人々を助ける彼らに対して、なんて私は綺麗な格好をしているんだろう。
つい、嫌味ったらしく笑ってしまう。今日も彼らが眩しくて、眩しくて、仕方が無い。