思い出を手繰り寄せて
「じゃあ、元1-A同窓会を始めるぞ!!皆グラスを持ったか!?」
「持ちましたわ!」
「持ったぞー!」
「持ったよー!!」
「ではいくぞ!かんぱあああい!!」
「「「かんぱあああい!!」」」
「でも轟まで来れたなんて、意外だったなー!」
「そうか?」
「確かに、轟くん凄く忙しそうだし!」
「いや、それは緑谷もだろ。」
「確かに!!デクくんもニュースやらなんやらでめっちゃ見る!!」
「え!?そ、そうかな……あははは……それならかっちゃんの方が、」
「あぁ!?俺の方が活躍してるに決まってんだろ!?」
「あー、はいはい。すぐ競おうとするの止めろよ爆豪……!」
「そうだぞ!!部屋が分けられてるとは言え、他のお客さんもいるんだ!!騒ぎすぎるんじゃないぞ!!」
「うっせぇんだよ!!クソメガネ!!」
「か、かっちゃん……!!」
今日も変わらず暴言を吐き散らかすかっちゃんに苦笑いを浮かべる。とは言え民間人には口こそ悪いものの救助は適切で、意外にも親切なのだと言うギャップに、ファンが多く生まれてるんだとか。
「そう言えば読んだ?今月の月間HERO!!」
「あ、読んだ読んだ!!今回は轟の特集だったな!」
「あぁ、読んだ。」
「読んだの!?」
「轟、そういうの気にするんだ!?」
「いや、そういう訳じゃねぇけど……。」
「あの雑誌には、以前助けられるようなお言葉を書いて頂きましたの、私達。」
「あ、それって熱愛のやつ?」
「あぁ、根も葉もないこと書かれて困ってたんだ。でも月間HEROだけ否定的で、あくまで客観的に見た記事を書いてくれててな……それからは出来るだけ買うようにしてる。」
「そうなのか!!でも俺も好きだぜあそこの記事。結構おもしれぇし、かなり細かい事まで書いてんだよな!」
「確かに。僕達の性格や、行動の実績とかも細かくまとめてあって、凄く調べられてるなぁっていつも思うよ……!」
「デクくんも読んでるの?」
「うん!!自分、と言うよりは皆の活躍を知るためにね。」
「け、プロヒーローになっても変わらずクソナードかよ。」
「でも、それは俺もだ。中々ニュースを追ってられない時は、あの雑誌から情報得たりもする。」
「そうなのかー!そういや今月の轟の記事読んだけど、化粧品とコラボすんだってな!?」
「ん、あぁ。」
「ええ!!そうなん!?発売されたら買おうかなぁ……。」
「私も気になるわ、流石イケメン人気ヒーロー、ショートね。」
「んな大したことねぇよ。」
そう言って、微かに笑った轟くんは昔と変わらずかっこよくて、女子たちを軽く赤面させるのは容易い事だった。
ほんと流石だなぁ……轟くんは年々かっこよくなる一方……。対して僕は……。なんて、人気は嬉しいことに割と高くあるが、その実態は子供が多く、皆の憧れになれたのも嬉しいが、
彼やかっちゃんのように女性ファンがつくのに憧れるのもまた、仕方の無いことだった。
「……なぁ、轟。聞いてもいいか。」
切島くんが神妙な面持ちで聞く。
「お、なんだ。」
「…………苗字の事、今も探してんのか?」
苗字さん、そのワードにピリッ緊張感が走る。
「……あぁ、探してる。とは言っても仕事に追われてろくに探せてねぇけど。」
「そ、か。…………早く見つかるといいな。」
「あぁ。」
その時の轟くんの表情は、どこか遠くを見ているようで、見ているこちらが胸を掴まれるような思いだった。
「……でも、轟ちゃん。名前ちゃんと会ったらどうするの?」
蛙水さんの言葉に、視線を落とす轟くん。
「……確かに。もうあれから何年も経ってる、苗字さんが今何をしてるのか、……誰といるのかなんて全然わからんよね。」
麗日さんの言葉も充分頷ける。轟くんは必死に探していても、苗字さんからしたら。むしろ轟くんは目立つぐらいに活躍してるのに、なんの連絡もないんだ。それが答えなのかもしれない。
「…………それでも、」
轟くんが絞り出すように声を出す。
「それでも、顔が見たい。…………幸せそうならそれで良いんだ、その姿さえ見られれば。」
そう言って切なそうに微笑んだ轟くんは、とても健気で、笑っているのに今にも泣いてしまいそうにも見えた。