熱愛報道
「え?いいじゃんいいじゃん!!それこそ真実な訳だし!!」
「え、い、いいんですか。」
「いいよいいよ!なんならめっちゃ盗撮しました感出しまくって2人の写真撮っちゃえば完璧!!」
それを盗撮として出すのは編集長としてはどうなんだ、とか思ってしまったが、思いの外ノリノリな編集長の機嫌を損ねぬよう黙っておく。
「でもそれ、あなた自分で記事書くの?」
「うっ……それなんですよね……。」
どんな羞恥プレイだって。熱い夜を過ごしたようだ、とか自分の写真に向けて書くとか死んでしまう。
「うーん、そうね…………後輩ちゃん!あなた書きなさい!!」
「え!?!?いいんですか!?!?」
いつの間にいたのか、と言うか聞いてたのか、と驚いている間に私と編集長の間へやって来た後輩ちゃん。
「えぇ、あなたまだ1人で記事書いたこと無かったわよね?」
「はい、まだ先輩と相談しながらで、」
「ならこれがあなたのデビュー戦よ。」
「まじですか!!」
「いやちょっと、編集長!?」
どんな嫌がらせだ、先輩と人気ヒーローの熱愛記事を書かせるとか。
「いいじゃない、やる気あるみたいだし。」
「え、ちょ、……ほんとに大丈夫?後輩ちゃん。」
「はい!!頑張ります!!先輩たちはめいいっぱい幸せそうな写真撮らせてくださいね!!」
めいいっぱい幸せそうな。…………そんなの出来るかなぁ、轟くんの前だと緊張したり、上品でもなんでもない顔して笑ったり、からかわれて怒ったり……。
私、轟くんの前でろくな顔してないかもしれない。
◇
「仕事が早くて助かります、勝手な要望聞き入れて貰ってありがとうございました。」
「いいのよ!!私もクリエティとの熱愛にはイライラしてたの、しつこ過ぎるって。」
「いやそれは……ほんと、しつこいです。」
「ね?うちの苗字とラブラブしてる写真見せつけて黙らせましょ!!」
「はい、お願いします。」
うぅ…………恥ずかしい……。
「……緊張してんのか?」
「そりゃ……撮られる側じゃないし……。」
「確かにな。でもいつも通りを貫いてくれって言われたぞ。」
だから、とするり、手を絡ませて繋がれる。
すると四方から聞こえる黄色い悲鳴。いや、もう……し、死ぬ……!恥ずかしくて死ぬ……!!
「まぁ人はなんか色々ついてるけど、デートだな。」
「こんな落ち着かないデートしたくなかったな……。」
「今日だけだ、幸せそうな顔をくれって言われてるぞ?」
「いやそれなんだけど、私轟くんの前でろくな顔出来てない気がして。」
「…………そうか?」
「うん、馬鹿笑いしてたり怒ったり、……あ、赤くなってたり、とか。そんなのばっかりじゃないかな。」
轟くんは、こちらが見ていて恥ずかしくなってしまう程に、愛おしそうに、そして幸せそうに私を見つめてくれるのに、私は全然それに返せていない。
それがなんだか露呈してしまいそうで、少し気が落ちてしまう。
「……そんな事ないぞ、苗字は可愛い顔して俺の事見てくる。」
「なっ………………ま、またそういう事!!」
「冗談でも、からかってもねぇぞ?」
「そ、それが逆にタチが悪いんだよお!!」
「あははは!!」
◇
一通り計画していたデートを完遂し、今日も轟くんがかっこよ過ぎた……と震えながら編集部へと戻る。
「先輩、私凄い記事が書けそうな気がします。」
「そうか、頑張れ。」
「何燃え尽きてるんですか!!」
「…………轟くん、かっこよかった…………。」
「今更!!!」
なんなんだろう、高校生の時はこんなんじゃなかったのに。
確かに轟くんはあの頃より大人になって、余裕もあるしからかってきたり、冗談を言うようになった。
でも、それだけじゃない気がする。
…………私が、彼のこと好き過ぎるのかなぁ。
「先輩、いつになったら轟さんとお付き合いするんですか?」
「………………うっ。」
「もう先輩が轟さんにメロメロなのは見ててわかりますよ!」
「うぐっ…………好き、だけど、……彼の隣にいていいのかな、とか、」
「そんなの誰でも思いますよ!!相手はあのショートですよ!?絶世の美女じゃない限り不安にもなりますって。」
「………………確かに。」
「それに、ショートは紛れもなく先輩が大好きなんですよ。」
「………………うん。」
「……こんなにも幸せそうなのに、一緒にならないなんて勿体ないです。」
そう言って見せてくれた写真。
そこに映っていたのは、なんとも幸せそうな表情で微笑み合う私達で。
「……私、こんな顔…………。」
「幸せなの、ダダ漏れですね?……轟さん以外に先輩をここまで幸せに出来る人なんていないんじゃないですか?」
「………………うん。」
「それなら、善は急げじゃないですか!!」
「え、でも記事、」
「それは私の仕事です!!熱愛を、本物の熱愛にして報道させて下さい!!」
そう言って後輩ちゃんに会社を追い出される。
熱愛を、本物の熱愛に。
私は迷うこと無く、既に家に帰ったであろう轟くんに電話した。