俺のヒーロー
「苗字!!」
「……轟くん。」
「どうしたんだ?まだ何か用事、」
急いだ様子で来てくれた姿に、もう胸がときめいて仕方が無くなる。
私は彼に駆け寄る勢いそのままに抱きついた。
「っ、苗字!?ここ、外だぞ……いいのか?」
帽子を目深に被っているとはいえ、わかる人にはわかるだろう。
こんなまだ明るい、夕日の差す公園なんて誰が通るかわからないのに。私は我慢出来なかった。
「……ごめん、なんか、すぐにでも伝えたくて。」
「……何かあったのか?」
優しく背を撫でながら、優しい声色で聞いてくれる轟くん。
「…………好き、です。」
「……え?」
「好きだよ、轟くん。」
「…………え、ちょ、苗字。」
「好き過ぎるんだよ、私。轟くんの事。今日撮ってもらった写真見て気づいちゃったんだ。」
あんなに幸せそうに笑えたんだ、私。
そこまで思わされた。
ここまでの人生、人に話せば不幸だと思われる要素の方が多すぎて、自分が幸せになれる未来が見えなかった。
でも、現に、あの写真の中の私はこれ以上なく幸せだった。
「だから、私、」
あなたと一緒に生きていきたい。
その言葉に目を見開き、そして、
「…………俺もだ、苗字。……ずっと一緒にいような。」
優しく唇を重ねた。
ゆっくりと離して、見つめ合う。
「……お前は、ヒーローを諦めたけど、…………お前は俺のヒーローだからな。」
「……え?」
「あの日、個性を失った日。お前は俺達全員のヒーローになった。……その事実は何も変わらない。あの日のヒーローは、」
とん、自らの胸を叩く轟くん。
「今も変わらずここにいる。」
「っ…………そっか、…………そっかぁ…………。」
「お前は、俺のヒーローだ。」
ぼろぼろと涙が零れる。
雄英を退学してからの日々、決して平坦な道のりではなかった。
たくさんたくさん泣いて、それでも死んだら駄目だと思って、お母さんと一緒になっちゃ駄目だと歯を食いしばって生きてきた。
その努力が、今報われた気がして。私は、ヒーローになれてたんだと、教えて貰えた。
「……俺のヒーロー。これからは俺に守らせてくれ。」
そう言って再び唇を寄せた轟くんに、
「……はいっ!」
そう答えて、私は彼の温度を感じた。
fin.