はじまりはじまり

「……まねーじゃー。」


「おう!!だから頼めねぇか!?潔子さん1人だと大変そうなんだよ!!」


「きよこさん。」


「お前、部活入ってねぇんだろ?頼むよ!!この通り!!」


目の前で頭を下げている威勢の良い2人組。西谷くんと田中くん。


しかしながら、特に知りもしない2人。しかもちょっと怖い2人に話しかけられただけでもビビりすぎて逃げ出したいのに、


頭を下げられて、更に悪目立ち。周りの人々がヒソヒソとこちらを見て話しているのが見える。


「……ぁ、あの、私は、」


でも、私は男子バレーボール部のマネージャーを務められるような器なんかなくて、


「頼む!!……駄目か?」


「頼むよ……潔子さん助けてあげてぇんだ…。」


「うっ……。」


でも、目の前で懇願するように頼んでくる2人を見ていると、とてもとても出来ません。と突き放せなくて、


「………と、とりあえず……仮入部なら…。」


「良いのか!?!?」


「ありがとう!!苗字!!」


ガシィ!!と西谷くんに手を掴まれて振り回される。もしかして握手のつもりなのだろうか、いや、それより、そんな事より、


「ひぃい!!!」


「…え?」


「ど、どした?」


突如涙目で悲鳴を上げた私に困惑する2人。


「手、触ったの嫌だったか?…ならごめん!!」


少し悲しそうに眉を下げて謝る西谷くんに、首がもげそうな程横に振って否定する。


違う、違うんだよ西谷くん。西谷くんだからだった訳じゃない、これは特定の人じゃなくて、


「……私、男の子に触れられるの苦手なの。」


「…え?」


「…まじか。」


「だ、だからね、マネージャーは少し難しいかもしれない。」


ごめんなさい。と再度謝る。すると、あ!!と大きな声を出す田中くん。


「どうした、龍?」


「それならよぉ、バレー部で男に慣れる特訓すれば苗字にとっても良いじゃねぇか!!」


「えぇ!?」


「なるほどな!!流石だぜ!!龍!!」


「い、いや、全然なるほどじゃな」


「よっしゃあ!!俺たち、協力するからな!!苗字!!」


「え、ちょ、あの」


「困ったことがあればなんでも言えよ!!助けるからな!!」


「ちょっと、きいて、」


「「うおおおおおおお!!!!」」


こうして、男子バレー部との日々が幕を開けた。


はじまりはじまり。

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