「小学生から……!?凄いね…。」
「そうっすか?」
「うん、そもそも中学でも男子バレー部ってそんなに無いから、私高校で初めてちゃんとしたバレーって見たよ。」
また少し薄暗い世界を2人で歩き続ける。
20分程度歩いて、体も少し暖まって冷えた風が心地いい。
「苗字さんは、なんでマネージャーに?」
「うーんと……。」
以前月島くん達にも話したように、あの日の惨劇を話した。
「……じゃあ最初は特にやりたかった訳でも無かったって事っすか?」
「……うん、そうだね。興味も無かったかも。」
「……今は?」
「え?」
「今は、どうですか。」
マネージャーの事、だよね。
「……今は、凄く楽しいよ。皆と過ごす時間が。マネージャーの仕事もやりがいあるし、気に入ってる。」
「…そっすか。」
そう一言零した影山くんは、ほんの少し笑ってるようにも見えて、私の心臓はドキドキと忙しなく働いた。
会話がそこまで得意ではない私たちの会話。
ちょっとだけ他の皆よりゆっくり話して、ちょっとだけ無言が多い会話。
でも、なんだかそれは気まずくも何とも無くて。むしろ私はゆっくりと流れる時の流れを感じて、居心地の良ささえ感じていた。
影山くんも、同じなら良いのにな。
◇
バチーン!!
「よっしゃ!!頑張るぞ!!」
両手で軽く頬を打って、気合を入れる。
「気合い入ってますね。」
「うん、影山くんは来るの早すぎるよ?」
「待ちきれなくて。」
ぐー。と影山くんのお腹の音が私の元まで聞こえる。隠す気が一切無いのが清々しい。
早くも食堂の席に座って待ち構えている影山くんを視界の端に捉えながら、私は食材たちと向き合った。
今日から朝昼晩。部員全員分のお料理祭り。楽じゃないけど、やりがいを感じて、つい口角が上がる。
手始めに取った卵を割り、私と影山くんの2人だけしかいない食堂に、黄身を割るように混ぜる音だけが木霊した。