「期末テストあるの、わかってるよね?」
ハッ!!!として田中くんとノヤっさんを見る。すると逃げ出す2人。
すかさず力くんが捕まえた。鮮やかな捕獲。拍手。
そうか……補習になると遠征に行けないのかぁ……。
「きょ、教頭先生になんとかお願い出来ませんか!!」
そう言って泣きつく日向くん、白目を向いている影山くん。彼らも赤点組…?
影山くんなんか頭の回転すっごい速いし、勉強出来ると思ってたのに、意外だな。
こうして、彼ら赤点組はとにかく赤点回避の為にバレー部のメンツに頭を下げて、勉強を教わることとなったのだ。
それは私も例外では無くて、田中くんとノヤっさんの勉強を力くんと共に見る事になった。
しかし、それも大事なのだが、私と潔子さんには別の任務がある。
「………潔子さん、あの、これは、」
「頑張って絵描いてみたの。どう?」
「凄く………前衛的だと思います……。」
私が名乗りを上げるべきだったかな……?と思うほど前衛的と言うか攻めていると言うか、そんな感じの潔子画伯。
まぁとにかく印刷してしまったので、これを手に私達は向かった。
1年生の教室に。
◇
「じゃあ私あっちの方から聞いてみるから、名前ちゃんはそっちからお願い。」
「了解しました!」
潔子さんの作ってくれた新マネージャー募集の紙を抱え込み、私は片っ端からクラスの子に聞いてみることとした。
しかし、何故かチラチラと色んな人がこちらを見てる。
2年生がこの階にいるの珍しいから当たり前かもしれないけど、……もしかしてなんかゴミついてるとか…?え?そういう事?
え、すっごい恥ずかしいじゃん。だ、誰か教えてよ…!?
チラチラと自分の制服を見て、払ったりしてるが全然視線は止まない。
えぇ…?と思っているところにえー!!?と言う大声が聞こえる。
そちらを見ると、日向くん。
「ひ、日向くん!!」
「苗字さん!ここ、1年の階ですけどなんでここに、」
「ひ、日向が2年の美女と知り合い!?」
「どういう関係だよ…。」
「ね、なんかゴミとかついてる!?」
「は、はい!?」
「なんかさっきからすっごい見られてる気がして…。」
たぶんクスクス笑われてるんだろう、恥ずかしい!!
くるりと1周して見せる。しかしなんとも歯切れの悪い反応をする日向くん。
「あー……それは……それはそうと!!」
それはそうと!?
「何してるんですか!?」
「あ、えっと……これ。新マネージャー探してるの。」
「え!!そうなんですか?……マネージャーの仕事大変ですか?1年でやれる事手伝いますけど…。」
「ううん、そうじゃなくて。潔子さんの提案で、私が来年から1人になるの気にかけてくれて。」
どこまでも優しいお人だ。惚れそう。
「そうなんですか……それで1年生で探してるってことですか?」
「そう!……良ければなんだけど、手伝って貰えない?」
「え?俺でよければ!!何したら良いです?」
「部活に入ってない子を教えて欲しい。できる限りで良いから!」
片っ端から聞いていくのは大変だ、最初から部活に入ってない子を知ることが出来れば助かる。ダメかな…?と日向くんに聞くと、そんなので良ければ!!と頷いてくれる。良い子だ…!
「ありがとう!!それじゃあ私行くね。」
「はい!また部活で!」
日向くんに手を振り、3組に向かう。
4、5組は潔子さんが向かってるし、1組から日向くんは聞いていってくれるだろうから。
「失礼しまーす…。」
足を踏み入れて、止まる。
あの大きくて丸まっている背中。恐らく……。
「美女……。」
「綺麗……!!2年生?」
「えぇ…うちのクラスに何の用だろ…。」
「え、ちょ、影山のとこ行ったけど大丈夫か。」
「もしかして、バレー部の人?」
なんかざわざわと話し声が聞こえるが、もう気にしない。日向くんはゴミついてるとか言ってなかったし。2年生が急に来るとびっくりするよね、ごめんね。
「影山くん。」
「………。」
「影山くん!」
「んがっ!?」
白目を剥いて寝ていた影山くん。声をかけるとビクッ!と体を震わせて、起きた。
その1連の動作が間抜けすぎて、つい笑ってしまう。
「あはははは!!」
「……苗字さん。」
目をゴシゴシと擦って、起きた影山くん。何してんだ?とでも言いたげに、こてん、と首を傾げる。それあざといぞ。
「マネージャー探してるの。」
「マネージャー?」
「うん、1年生でマネージャー。」
影山くんの前の席を借りて座る。え……こ、これって……影山くんと同じクラス疑似体験なのでは……!?
後ろの席に影山くんがいたらこんな感じかぁ。と言うか1番後ろじゃなくていいのかな、影山くんの後ろの子黒板見えなく無い?
「仕事、大変なんすか。手伝いますよ?」
日向くん同様手伝いを申し出てくれる優しい影山くん。
「ううん、ありがとう。充分手伝ってもらってる!そうじゃなくて来年以降の為に潔子さんが提案してくれて。」
「…そうなんすか。」
「それでね、このクラスで部活に入ってない子ってわかる?」
「…………うぬん。」
何その鳴き声。笑いそうになるんだけど。
眉間に皺を寄せ、考えている影山くん。あまりコミュニケーションが得意でなくとも、少しくらい情報は持っているようだ。
「……聞いてみます。」
「いいの?」
「はい。また、部活の時に教えます。」
「ありがとう!助かる!!」
随分話してしまったな、と時計を見るとお昼休みが終わりそう。
「や、やば。私帰るね!!お願いします!!」
「うす。」
1つ頷く影山くんを見届け、私は2年生の階へと急いで戻った。