テストと新マネージャー

「期末テストあるの、わかってるよね?」


ハッ!!!として田中くんとノヤっさんを見る。すると逃げ出す2人。


すかさず力くんが捕まえた。鮮やかな捕獲。拍手。


そうか……補習になると遠征に行けないのかぁ……。


「きょ、教頭先生になんとかお願い出来ませんか!!」


そう言って泣きつく日向くん、白目を向いている影山くん。彼らも赤点組…?


影山くんなんか頭の回転すっごい速いし、勉強出来ると思ってたのに、意外だな。


こうして、彼ら赤点組はとにかく赤点回避の為にバレー部のメンツに頭を下げて、勉強を教わることとなったのだ。


それは私も例外では無くて、田中くんとノヤっさんの勉強を力くんと共に見る事になった。


しかし、それも大事なのだが、私と潔子さんには別の任務がある。


「………潔子さん、あの、これは、」


「頑張って絵描いてみたの。どう?」


「凄く………前衛的だと思います……。」


私が名乗りを上げるべきだったかな……?と思うほど前衛的と言うか攻めていると言うか、そんな感じの潔子画伯。


まぁとにかく印刷してしまったので、これを手に私達は向かった。


1年生の教室に。





「じゃあ私あっちの方から聞いてみるから、名前ちゃんはそっちからお願い。」


「了解しました!」


潔子さんの作ってくれた新マネージャー募集の紙を抱え込み、私は片っ端からクラスの子に聞いてみることとした。


しかし、何故かチラチラと色んな人がこちらを見てる。


2年生がこの階にいるの珍しいから当たり前かもしれないけど、……もしかしてなんかゴミついてるとか…?え?そういう事?


え、すっごい恥ずかしいじゃん。だ、誰か教えてよ…!?


チラチラと自分の制服を見て、払ったりしてるが全然視線は止まない。


えぇ…?と思っているところにえー!!?と言う大声が聞こえる。


そちらを見ると、日向くん。


「ひ、日向くん!!」


「苗字さん!ここ、1年の階ですけどなんでここに、」


「ひ、日向が2年の美女と知り合い!?」


「どういう関係だよ…。」


「ね、なんかゴミとかついてる!?」


「は、はい!?」


「なんかさっきからすっごい見られてる気がして…。」


たぶんクスクス笑われてるんだろう、恥ずかしい!!


くるりと1周して見せる。しかしなんとも歯切れの悪い反応をする日向くん。


「あー……それは……それはそうと!!」


それはそうと!?


「何してるんですか!?」


「あ、えっと……これ。新マネージャー探してるの。」


「え!!そうなんですか?……マネージャーの仕事大変ですか?1年でやれる事手伝いますけど…。」


「ううん、そうじゃなくて。潔子さんの提案で、私が来年から1人になるの気にかけてくれて。」


どこまでも優しいお人だ。惚れそう。


「そうなんですか……それで1年生で探してるってことですか?」


「そう!……良ければなんだけど、手伝って貰えない?」


「え?俺でよければ!!何したら良いです?」


「部活に入ってない子を教えて欲しい。できる限りで良いから!」


片っ端から聞いていくのは大変だ、最初から部活に入ってない子を知ることが出来れば助かる。ダメかな…?と日向くんに聞くと、そんなので良ければ!!と頷いてくれる。良い子だ…!


「ありがとう!!それじゃあ私行くね。」


「はい!また部活で!」


日向くんに手を振り、3組に向かう。


4、5組は潔子さんが向かってるし、1組から日向くんは聞いていってくれるだろうから。


「失礼しまーす…。」


足を踏み入れて、止まる。


あの大きくて丸まっている背中。恐らく……。


「美女……。」


「綺麗……!!2年生?」


「えぇ…うちのクラスに何の用だろ…。」


「え、ちょ、影山のとこ行ったけど大丈夫か。」


「もしかして、バレー部の人?」


なんかざわざわと話し声が聞こえるが、もう気にしない。日向くんはゴミついてるとか言ってなかったし。2年生が急に来るとびっくりするよね、ごめんね。


「影山くん。」


「………。」


「影山くん!」


「んがっ!?」


白目を剥いて寝ていた影山くん。声をかけるとビクッ!と体を震わせて、起きた。


その1連の動作が間抜けすぎて、つい笑ってしまう。


「あはははは!!」


「……苗字さん。」


目をゴシゴシと擦って、起きた影山くん。何してんだ?とでも言いたげに、こてん、と首を傾げる。それあざといぞ。


「マネージャー探してるの。」


「マネージャー?」


「うん、1年生でマネージャー。」


影山くんの前の席を借りて座る。え……こ、これって……影山くんと同じクラス疑似体験なのでは……!?


後ろの席に影山くんがいたらこんな感じかぁ。と言うか1番後ろじゃなくていいのかな、影山くんの後ろの子黒板見えなく無い?


「仕事、大変なんすか。手伝いますよ?」


日向くん同様手伝いを申し出てくれる優しい影山くん。


「ううん、ありがとう。充分手伝ってもらってる!そうじゃなくて来年以降の為に潔子さんが提案してくれて。」


「…そうなんすか。」


「それでね、このクラスで部活に入ってない子ってわかる?」


「…………うぬん。」


何その鳴き声。笑いそうになるんだけど。


眉間に皺を寄せ、考えている影山くん。あまりコミュニケーションが得意でなくとも、少しくらい情報は持っているようだ。


「……聞いてみます。」


「いいの?」


「はい。また、部活の時に教えます。」


「ありがとう!助かる!!」


随分話してしまったな、と時計を見るとお昼休みが終わりそう。


「や、やば。私帰るね!!お願いします!!」


「うす。」


1つ頷く影山くんを見届け、私は2年生の階へと急いで戻った。

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