あれから暫くして、仁花ちゃんは正式入部となった。
日向くんと影山くんは仁花ちゃんにも勉強を教わっているらしく、特に日向くんは仲良くなっていた。
「影山くんは、仁花ちゃん話しかけにくい?」
「?なんでっすか。」
相も変わらず荷物持ちや、片付け。体育館の片付けもそうだが、私の仕事まで手伝ってくれる影山くん。
「いや、だって、同い年だし私より話しかけやすいかなぁとか思って。」
本当のところは、潔子さんでも無く、仁花ちゃんでも無くどうしていつも私の手伝いをしてくれるのか。
自分が少しだけ特別扱いされてる自覚はあった。少しだけ、少しだけね!!
だから、その理由が知りたくて。邪な心でごめんなさい。
「……別に、話しかけにくいとかじゃないっすけど、」
「うん?」
「苗字さんが、他の人より話しかけやすい……から。」
ずきゅぅん。心臓を貫かれた。死ぬかもしれない。
それは、私に、他の人より、懐いている。そう言った解釈で宜しいですか……!?
「あ、う、そ、そっかぁ。そ、そっかそっかぁ。」
「…?」
訝しげな表情を浮かべる影山くん。キモくてごめんね。嬉しすぎちゃった。
「よし!さっさと片付けよう!影山くんも月島くんに勉強教わらないとでしょ?」
「うっ…。」
一瞬で嫌そうな顔になる影山くん。それを見て笑ってしまう。本当に勉強嫌いなんだなぁ。
「影山くん、」
「…はい?」
「一緒に東京行こうね。」
「………当たり前っす。」
「だよね!」
ム。と唇を突き出した影山くんに、笑いかける。
当たり前。それが本当に当たり前になるように、勉強してもらわなければ!
◇
「………燃え尽きてるね。」
「赤点取ったみたいだよ……。」
「あらら……田中くんとノヤっさんはどうだった?」
「ふふふ……お前らのお陰で、」
「俺らは赤点回避!!やれば出来る俺たちなのさ!!」
そう力くんと私にドヤ顔する彼ら。40点て。
◇
「そっか……冴子姉さん来てくれるんだね。」
「知ってるんすか?」
「うん、田中くんの家に行くとよく会うよ。」
いつも会うとかーわいいなー!!と言って頭をグリグリ撫でられる。そしていつもあの豊満なお胸に嫉妬する。
「へぇ……でもとりあえず良かったです。」
「そうだねぇ、東京まで来れそうで安心したよ。補習頑張ってね?」
「……うす。」
よし、片付け終わり!
「今日も手伝ってくれてありがとう!」
「いえ。……あの、」
「うん?」
「……勉強、出来なくて呆れましたか。」
え?
「……そんな事、無いよ?出来ない人他にもいるし。どうして?」
眉間にたっぷりを皺を刻んで、言いにくそうにしている影山くん。
「…………っなんでもないっす!!」
「えぇ!?」
お先失礼します!!と先に帰ってしまった。
何か言いたそうだったのに、……えぇぇ?