亀裂は弾けた

東京に着いて、連敗中。


もはや潔い程に連敗中。日向くんと影山くんがいないから、というのもあるだろうが、そもそもここにいる他の学校、レベル高い。


この後には1週間の長い合宿も控えてるのに、大丈夫だろうか。私なら心折れそうなんだけど…。


「おぉー!まだやってんじゃん!上出来!!」


「姉さん!!」


「え?西谷のお姉さん?」


「龍のです!!」


「……無事で良かったぜ、お前ら。」


冴子姉さんの後ろに目をやると、補習で遅れた2人の姿。まるでヒーローの登場だ。


2人が戻った烏野は勝利を収める。


やっと見られた笑顔に安堵した1日目。





しかし、亀裂は突然弾けた。


日向くんと旭さんの衝突。


日向くんと影山くんの変人速攻で目を瞑るのを辞めたいとの発言。


日向くんを中心に、徐々に亀裂は広がっていき、緊張感が高まる。


そしてそこから日向くんはメンバーから外され、外から見ることに。


烏野高校に戻ってきてからも、表情の晴れない皆。


大丈夫かな。春高予選、時間そんなに無いのに…。


そんな事を考えていると、慌てたような仁花ちゃんの声。


急いで声のする方へ向かうと、日向くんを投げている影山くんの姿。


「何やってるの!?」


「名前さん……!!ふ、2人が、け、けんか、」


「……仁花ちゃん田中くん近くにいたから呼んできて。」


「は、はい!!」


「トス上げてくれるまで、離れねぇからな!?」


「だから、こんなの何回やったって変わんねぇよ!!」


「ちょっと、いい加減辞めてよ!!頭冷やして!!」


2人の肩を掴むが、全く聞こえていないようにさえ感じる。


「トス!!上げてくれよ!!!!」


「……っうっせぇんだよ!!」


「っ!?」


え、ちょ、





「お前ら、喧嘩は辞めろー!!!」


良かった、田中さんまだ帰ってなくて…。………え?


「……おい、苗字?おい、おい!!!」


田中さんが必死に揺さぶる。


しかし、目は覚まさないし、


血も、止まらない。


「……お前ら、何した?」


「……わ、わかんねぇっす、今、気づいて、」


日向くんも影山くんも、本当に今気づいた様だった。2人とも驚いて固まっている。


2人とも熱くなっていたから周りが見えていなかったんだ。でも、だからってこんな、


「……病院。やっちゃん、先生まだいるはずだから呼んできてくれるか。」


「は、…はい!!」


「田中さん、俺達も、」


「お前らもう帰れ。」


「で、でも俺たちのせいで、」


「いいから帰れ!!お前らがいても出来ることねぇよ…。」


「「…………っ。」」

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