「の、ノヤっさん……旭さんにちゃんと謝らなくて、良いの……?」
「………。」
「ノヤっさ」
「うるせぇよ!!……わかってる……。」
怒鳴られて耳がビリビリと震える。
怖くて泣きそうになるのを堪えながら、逃げ出しそうになる足を地に縫い付けた。
「謹慎開けたら、すぐ戻ってきてね。」
「……勿論。……ごめん、怒鳴って。」
「全然。……じゃあ、私部活行くね。」
「おう。……名前!」
「うん?」
「俺がいない間、皆をよろしくな。」
「…………善処します!」
任せて!!と言えるようになりたい所だが、ノヤっさんのように皆を鼓舞出来る度胸も元気も足りない。
「ははは!!お前らしいな!!」
ちょっと久しぶりに見たノヤっさんの笑顔に安心し、手を振って私は体育館へと向かった。
◇
「名前ちゃん。」
「はい!」
「明日から新入生の仮入部始まるから、何事も無ければ皆入部すると思うし、ジャージの注文頼んでも良い?」
「はい、任されました。」
今日も綺麗な潔子さん。笑ったお顔も素敵だ、憧れる。
「苗字ー。」
「ん、どうしたの?田中くん。」
「その……最近、ノヤっさんどうだよ?」
「最近って……話してないの?」
「いや話してるけど、割といつも通りな顔してっからよ…。」
「私が話しても割とそんな感じだけど……たまにちょっと落ち込んでるかも、しれない。」
「……そうか。」
「苗字ー!」
「はーい!!」
「……田中ってさぁ。」
「はい?」
「なんで清水は恥ずかしくなっちゃうのに、苗字は恥ずかしくねぇの?」
「えぇ?そりゃ、苗字だからっすよ。」
「でもよ?苗字もかなり顔面偏差値高めだろ?なのに恥ずかしくねぇのか?」
「……それ、だいぶ前にも大地さんに言われました。」
「お、まじ?なんで?」
「…わかんねぇっす、俺もノヤっさんも苗字は苗字って感じで。…勧誘するのに必死だったからっすかねぇ?」
「ふーん…?まぁそんなお前らのお陰で、日々苗字は男に対する耐性ついてきたもんな!」
「そっすね!だいぶ悲鳴上げられなくなりました!」
「でも問題は……次新1年生入ってくるもんなぁ…。」
「あぁ………また1からスタートになりそうっすね…。」
「田中くん、ちょっと手伝って貰ってもいい?」
「おうよ!どうしたー?」
「…………ははは。」
「何にやついてんだスガ。」
「だってよ?もうすぐ1年生入ってくんべ、そうしたらまた苗字の悲鳴オンパレードが聞けるんだぞ?楽しみだなぁ。」
「お前なぁ…。」