スポットライトの裏側

「の、ノヤっさん……旭さんにちゃんと謝らなくて、良いの……?」


「………。」


「ノヤっさ」


「うるせぇよ!!……わかってる……。」


怒鳴られて耳がビリビリと震える。


怖くて泣きそうになるのを堪えながら、逃げ出しそうになる足を地に縫い付けた。


「謹慎開けたら、すぐ戻ってきてね。」


「……勿論。……ごめん、怒鳴って。」


「全然。……じゃあ、私部活行くね。」


「おう。……名前!」


「うん?」


「俺がいない間、皆をよろしくな。」


「…………善処します!」


任せて!!と言えるようになりたい所だが、ノヤっさんのように皆を鼓舞出来る度胸も元気も足りない。


「ははは!!お前らしいな!!」


ちょっと久しぶりに見たノヤっさんの笑顔に安心し、手を振って私は体育館へと向かった。





「名前ちゃん。」


「はい!」


「明日から新入生の仮入部始まるから、何事も無ければ皆入部すると思うし、ジャージの注文頼んでも良い?」


「はい、任されました。」


今日も綺麗な潔子さん。笑ったお顔も素敵だ、憧れる。


「苗字ー。」


「ん、どうしたの?田中くん。」


「その……最近、ノヤっさんどうだよ?」


「最近って……話してないの?」


「いや話してるけど、割といつも通りな顔してっからよ…。」


「私が話しても割とそんな感じだけど……たまにちょっと落ち込んでるかも、しれない。」


「……そうか。」


「苗字ー!」


「はーい!!」


「……田中ってさぁ。」


「はい?」


「なんで清水は恥ずかしくなっちゃうのに、苗字は恥ずかしくねぇの?」


「えぇ?そりゃ、苗字だからっすよ。」


「でもよ?苗字もかなり顔面偏差値高めだろ?なのに恥ずかしくねぇのか?」


「……それ、だいぶ前にも大地さんに言われました。」


「お、まじ?なんで?」


「…わかんねぇっす、俺もノヤっさんも苗字は苗字って感じで。…勧誘するのに必死だったからっすかねぇ?」


「ふーん…?まぁそんなお前らのお陰で、日々苗字は男に対する耐性ついてきたもんな!」


「そっすね!だいぶ悲鳴上げられなくなりました!」


「でも問題は……次新1年生入ってくるもんなぁ…。」


「あぁ………また1からスタートになりそうっすね…。」


「田中くん、ちょっと手伝って貰ってもいい?」


「おうよ!どうしたー?」


「…………ははは。」


「何にやついてんだスガ。」


「だってよ?もうすぐ1年生入ってくんべ、そうしたらまた苗字の悲鳴オンパレードが聞けるんだぞ?楽しみだなぁ。」


「お前なぁ…。」

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