「「「しーらとりざわ!!」」」
鳴り響く太鼓の音と人の声。
思わず圧倒される白鳥沢学園の応援団。
隣に並び立つ冴子姉さん、そして仁花ちゃんと共に声を張り上げる。
どんなに拙い応援でも、彼らの背中を押さなくてはいけないんだ!!
応援にも、牛島さんにも圧倒されながらも、私達はコートの中も外も関係なく必死にもがいた。
◇
潔子さんの瞳から涙が零れている。
しかし、その光景もすぐに見えなくなった。
「……あれ?」
顔を触ると、濡れている。泣いてるんだ私も。
白鳥沢学園に勝利した烏野。全国大会が決まったんだ。
皆を信用してなかった訳じゃない、でもこんな結果になるなんて信じてた訳でもない。
驚いて、感動して、涙は止まらない。
「……名前さん、下行きましょう!!」
仁花ちゃんも目に涙を浮かべながら声をかけてくれたが、嗚咽が止まらなくて返事が出来ない。
「……大丈夫ですか…?」
「……おちついたら……いくから、さき、」
「!はい、先行ってますね。」
言いたかった事を理解してくれて、先に皆の元へと向かった仁花ちゃん。
私は止まらぬ涙を無理に止めようとはせず、気が済むまで泣くことにした。
◇
「……あれ。」
「んぉ?どうした?影山。」
「苗字さんがいねぇ。」
「え?……ほんとだ。谷地さーん?」
「はいはい?」
「苗字さんは?」
「あ……。名前さんは、ちょっと、試合に感動し過ぎて…落ち着いたら来るって言ってた!」
「そっかぁ…。」
「…………。」
◇
誰もいなくなった観覧席。
タオルを顔に押し付け、止まりつつある涙を吸わせた。
ああぁ、駄目だ。もはやコートを見るだけで泣けてくる、皆の勇姿を思い出してしまう。
じわぁ、と滲み始めた涙を止めようとまたタオルを押し付けた。
そろそろ皆の所に戻らないと迷惑になるなぁ。そう思ってゴシゴシとタオルで目元を拭いていると聞こえる足音。
誰だろう、忘れ物した人とかかな。…ボロ泣きしてるの見られると恥ずかしいからタオルで隠しとこ。
その足音が消えるまで、私はタオルで顔を覆った。しかし、
「……苗字さん。」
聞こえたのは、大好きな声。
「……っ影山くん!?」
思わず顔を上げる。そして気づく。あ、私今顔すっごい汚いのでは、と。
慌ててまたタオルで顔を覆う。
「…大丈夫っすか?」
「う、うん。涙はやっと止まった。」
「……じゃあなんでタオル。」
「今顔酷いだろうから…目も真っ赤だろうし……。」
「気にしないっすよ、だから顔見せてください。」
「いい、いや!!無理!!」
グイグイタオルを引っ張ってくる影山くん。な、なんで顔を見たがるわけ…!?
「……あ!!」
少しの動揺から手元を緩めてしまう、その隙に奪われたタオル。
「……全然、顔酷く無いっすよ。」
「う、あ、み、見ちゃダメ。」
なんとか隠そうと俯く。
「……わかりました、見ません。」
その声にありがとう、と声を零すと同時に感じた温もり。
……え?
肩に乗った影山くんの頭、背中に回された腕。
「かか、かげ、影山くん!?」
「……はい?」
「はい?じゃなくて……!?」
「…勝ちました。」
「……え?」
「勝ちました。皆で。」
「……うん。」
「1人じゃない、あれ嬉しかったです。」
「……うん。」
「…今日の俺も、活躍してました?」
「うん、大活躍だった。…見惚れちゃうようなプレーだったよ。」
「……そっすか、…じゃあ、勝手に抱き締めてるの許してください。」
そう言って腕に力を込められる。
こんな姿誰かに見られたらまずいよなぁ、そんな思考もあったけれど、
またも流れ始めた涙を拭うことも出来ず、私は頷いて、彼の背中に腕を回した。