魔の3日目

稲荷崎に勝利を収め、翌日。


「……名前。」


「研磨くん!」


「影山とは仲良くしてる?」


「うぐぅっ……。」


「何そのリアクション、攻撃でもされたの。」


ふふふ、と笑う研磨くん。違う、攻撃は自分で自分にしました。


「実は…………全国大会終わったら告白しようと思って。」


「へぇ、いいんじゃない?」


「軽!!」


「2人とも仲良いし、上手くいくよきっと。」


「そんな上手くいくかな……。」


「……上手くいくと思ったから告白するんじゃないの?」


「いや……、気づいたら思いが止められなくなっちゃって、全国大会終わったら話したいことがあるって言ってしまった。」


「へぇ、やるね。」


「うぐぅっ……そんな度胸も無いくせに、やっちまった……。」


「まぁ、名前可愛いと思うし大丈夫じゃない?」


「……え?」


「え?」


「……可愛い?」


「うん、可愛いでしょ。え?皆言ってくれないの。」


「そんなの言われた事ないけど……。」


「えぇ……?普通にモテそうに見えるけど?」


「…………ありがとう、なんか自信が出てきた。」


「あ、そうなの?……なら良かった。じゃあ俺は行くよ、……また試合でね。」


「うん、またね!!」


研磨くんが去ってから考えてみた、田中くんのよく言う顔だけ、ってそういう意味だった……!?


流石に可愛いと言われて、すぐに自分の顔を見ても可愛いなんて微塵も思わないが、少なくともそう思ってくれる人は存在するのだとわかった。


これは物凄い事だ。だってあの研磨くんがお世辞を言うわけが無い、ごめんね研磨くん。


もしかして、もしかする?なんて浮かれた心を叱咤する。そんなふわふわしてて良い場所じゃない、今から始まるのは決戦だ。


ゴミ捨て場の決戦。





見事音駒高校に勝利を収め、鴎台高校との試合中アクシデントは起きた。


日向くんの発熱。


潔子さんとかち合う視線。急いでコートに向かう。


「わ、私も行きます!!」


「仁花ちゃんは、ここにいて。……もう何も無いとは言いきれないから。」


涙目でそう話す仁花ちゃんを観覧席に落ち着かせる、また誰かが怪我するかもしれない。絶対無いなんて保証は無いんだから。


先生に連れられて出てきた日向くんに上着を着せる。


コートの中を見ると、影山くんがこちらを見ていて。遠くてわからないけれど、なんとなく目が合ったようにも感じた。


皆を、烏野をお願い。そんな気持ちを視線に込めて、嶋田さんと共に日向くんを病院に連れていった。


そして車の中で見た試合。その中で、研磨くんから借りたタブレットの中で、私たちの春高は終わった。

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