気持ちと決意

「昨日勝ってたね!おめでとう!」


「あざっす、次も負けません。」


「応援してる!」


影山くんと和解してからは、私も試合を見に行くようになった。


最初こそ烏野高校で一緒だった人達にやっと来たのか!と怒られたが、今となっては軽く挨拶されるだけ。


「昨日のプレーも良かった!!そこでツーアタックするかぁー!!って思ったよね!って田中くんと熱く語っちゃったよ。」


「田中さんも来てたんすか?」


「いや!テレビで見てたって。終わった後潔子さんも含めてテレビ電話した!」


「なるほど…………。」


「やっぱり同じ趣味を語れる人がいるのは良いよねぇ、バレーについて田中くんや潔子さん達と話してるの楽しい!」


「……俺は?」


「影山くん?勿論楽しいよ!!でも、影山くんや日向くんのプレーについてOB達と語るのが何より楽しい!」


なんてったって、一緒にプレーしていたのだから。


一緒に全国を戦い抜いた仲間なんだから、自慢出来る後輩に決まってる、誇らしくもなる。


だからこそ、彼らのプレーについて皆で褒めたり、笑ったりするのが本当に楽しい。


「…………そっすか、あざっす。」


「うん、だから次の試合も期待してるね?」


「はい、また褒めてください。」


「ふふ、うん!」


随分と仲良くなれた気がする、影山くんもよく笑うようになった。


今の関係はとても幸せ。でも、やっぱり人間というのは強欲で、


もっともっと、欲しくなる。もっと彼の特別が欲しくなる。


1度理由があるとは言えフラれたと言うのに、めげないヤツめ。と自分自身に呆れてしまう。


影山くんとはきっと、もう一度は無いんだろう。わかってる、ちゃーんとわかってますよ。


だからこそ、私だって新しい出会いを探さなければ。


「次、試合の次の日会えませんか?」


「うーんと…………いつ?」


「来月の、2週目です。試合が金曜なんで、土曜日。」


「土曜日…………あ、この日はごめん、無理だ。」


「用事、あるんすか。」


基本的に私は影山くんの誘いを断らなかった、それほどに暇人なのだ。大学からの友人しかいないし、彼女たちも皆東京に残ってるわけじゃない。


なので断った事が意外だったのか、目を丸くする影山くん。


「うん、……ちょっと、………………合コンに。」


誘われてまして。と続けてみた。


友人に誘われた合コン。最初は行く気なんて無かったけれど、私もそろそろ新しい出会いを探さなければ。と思い立ち、行くことにした。


それをわざわざ影山くんに言わなくても。と思ったが、別に悪い事をしている訳でもないし、……恥ずかしながら、彼の反応が見たかったのも事実。


肝心な彼の反応、恐る恐る顔を見てみると、


「……え、ちょ、影山くん?」


声をかけても反応が無い。まるで屍のようだ。


完全にフリーズしてしまっている。な、何故。


「………………ご、合コンって。」


「え、あ、うん。」


「……彼氏欲しい人が行くところですよね……!?」


復活するや否やそんな事を言う影山くん。


「か、彼氏欲しい人っていうか……まぁ、そうだね。出会いが欲しい人が行くところだね。」


「なっ…………か、彼氏欲しいんすか!?」


「ぅえ!?そ、そりゃ欲しいよ。」


1人でも楽しく生きられるようになりたい、とは思ったが、まだ諦めてなんかいない。誰かと生きることを。


「……………………な、なんで!!」


「え!?」


「なんで欲しいんすか!!」


眉間に深く刻まれたシワ。怒っているような悲しんでいるような表情。


それは、…………期待してもいいのかな。


「……寂しく生きたくないから。」


「それなら、俺が!!……………………俺が……。」


段々と声が小さくなり、顔もくしゃり。泣きそうな顔になってしまった影山くん。


最近こんな顔ばかり見ている気がする。


やっぱり、隣にいるのは私じゃ駄目なのかな。


「…………影山くんはさ、もう彼女作らないんでしょ?」


「……え?」


「だって、バレーに集中出来ないだろうし。」


「…………それは、高校の時の話で。今は精神的にも成長したんで…………その、作ろうと思えば作れます。」


…………………………え?


…………そうなの!?


愕然としてしまう、じゃあなんで、そんなに泣きそうな顔をしてまで……私に手を伸ばさないのか。


………………あぁ、私を傷つけてしまったからか。


私がどれだけ許すと言っても、どれだけ距離が近くなっても、


私を傷つけてしまった自分が、……許せないんだね。


彼の隠された気持ちと決意を垣間見てしまい、少しだけ涙腺が緩みそうになる。


慌てて唇を噛み締め、涙だけは零れないように堪えた。


「で、でもそれは、名前さんとどうこうなろうとかそんなんじゃなくて、」


「合コン行くのやめる。」


「…………え?」


「その日、空けとくからご飯いこ?」


「え、……い、いいんすか。」


「うん、影山くんといた方が楽しいだろうし!」


そう笑いかけると、むず痒そうな顔をした後、心底嬉しそうに笑った。


ずっと笑ってて欲しい、自分を許して、自分が欲しいものに手を伸ばす自由を手に入れて、笑っていて欲しい。


願わくば、その時隣に並び立ちたい。


それは必死に自分から私を守ろうとしている後輩に対する、裏切りかもしれないけれど、


私はもう、欲しいものは欲しいと叫ぶ。


だから、待ってて。

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