音にならない気持ち

「影山くん、今度遠出しませんか。…………うん、おかしくない。…よね。」


なんて独り言を呟きながら、彼に送信する。


彼に金平糖を贈り続けてしばらく経った。一番最近に渡した時も、不思議そうな顔をしていたから、全く気づいてないだろう。


それでも私は謎の満足感を感じていた。見えてないし、気づかれてもないけど、彼に好意を贈っている気になれたから。


影山くんからしたら謎に金平糖を渡してくる人だろうけど……。


なんて考えているとついた既読。


『はい、行きましょう。』


なんとも淡白そうな文面ではあるが、影山くんらしい。それに、付き合いの長い私からするとわくわく、と言う絵文字すら見える。


『行きたい場所があるんだ、私に付き合ってもらってもいい?』


『はい。全然いいですよ。』


その言葉を見て、今日も優しいなぁ。と惚れ惚れしてしまう。


彼はいつでもどんな時でも優しい。その優しさに悩んだり、苦しんだのは今や良い思い出だ。


今は、影山くんに対する気持ちを隠してない。…………いや、金平糖はちょっと隠してるけど……とにかく押し殺そうととかそういうの、してないのだ。


だからか、気持ちは晴れやかで。いつの日かまた彼の特別になれる日なんかを夢見てしまってる。


私はもう逃げも隠れも、隠しもしない。


だからお願い。


自分を許して、影山くん。





「影山くん、花粉症とかじゃない?」


「……?はい、違いますけど。」


「良かった!……行きたいところって外だからさ、花粉症だったらしんどかったかもって思って。」


大きな彼と並んで座る電車の中。


今日もマスクはしているが、隠し切れてないイケメンに胸が高鳴る。


「あ、次。次の駅降ります。」


「うす。」


立ち上がり、出入口の近くへ。


段々と速度を落としていく電車。しかし思っていたより急にブレーキでもかかったのか揺れる車内。


「う、わ、……!」


ぐらり、足元が揺れてふらつく。


しかし咄嗟に逞しい腕に包まれて、尻もちをつくことは無かった。


「大丈夫っすか。」


「う、うん!ありがとう……!」


慌てて体勢を立て直し、影山くんから離れる。


か、かっこよすぎる…………駄目だ、イケメンすぎて挫けそうになる…………。


あまりに眩しい影山くんに、やはり自分なんて似合わないのでは……なんてネガティブ思考になりかけるが、そんなの今更考えたって仕方が無い。彼がかっこよすぎるのはずっとだろう!!


真っ赤になってしまった顔を手で仰ぎながら、私は電車から降りた。





咄嗟に抱き留めた名前さんの体。


あまりに細くて、小さくてびっくりした。こんなに小さかったかこの人……。


ありがとう、と笑いかけられむず痒い気持ちになる。


守りたい。この小さな体を。


そう言えたらどんなに楽か。


名前さんからの気持ちにも気づいて、それでも尚応えられない歯痒さを感じる。


やっぱり俺は、俺を許すことが出来ない。


あの頃の判断としては間違っていなかったとしても、酷い傷つけ方した事には変わりない。


目の前で笑う大好きな人。欲しい、欲しい。
すっげぇ、欲しい。喉から手が出る程に欲しい。


でも、


唇を噛み締める。


俺じゃ、駄目なんだ。


俺以外でも、嫌なのに。

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