笑え、笑え。

「うーーん!!気持ちいい!!」


「ですね、…………こんなとこ東京にあったんすね。」


2人で並び立つのは自然豊かな中にある、花畑。


とても東京とは思えない場所に、故郷宮城を思い出す。


天気も良く、見渡す限りの花畑。空気もビル街と比べると遥かに良い気がして気持ちが良い。


共に伸びをする影山くんを見ると、気持ちよさそうに目を細めて果ての見えない花畑に、見入っていた。


良かった、喜んで貰えてる…………気がする。


お花なんて男の子には興味無いかなぁ、ましてや影山くんだし。なんて思ったけれど、興味深そうにキョロキョロと周りを見渡している様子を見ると、ちゃんと興味はあるようだ。


「色んな花が咲いてるみたいだし、お散歩ついでに見に行かない?」


「いいっすね、天気も良くて気持ちいいし。」


「ね、晴れて良かったぁ。」


2人並んで歩き出す。


「雨でもここに来る予定でした?」


「うっ…………雨だったら流石に辞めてたかなぁ。」


「ふふっ……そっすよね。」


「影山くん、私が行きたいところあるって言ってもどこですか?って聞かなかったね。」


「あー……確かに。はい。」


「気にならなかったの?」


「んなこと無いっすけど……名前さんが変な所連れてくとも思えなかったし。」


当たり前のように言う信頼に、きゅううっと胸が高鳴った。


「……じゃあ今度は、雪降る中海にでも連れて行こうかな。」


「寒いじゃないっすか!」


真っ直ぐに信じている影山くんに対して沸いた悪戯心。


それに対して声を上げて笑った影山くん。


周囲の花々も相まって、凄く、凄く綺麗で。


カシャ。


「………………え?」


「あ、ごめん、つい。」


ついってなんだついって。


手元には綺麗すぎる影山くんが撮り収められたスマホ。目の前にはシャッター音にきょとん、としている影山くん。


「あ、あ、そ、その、……凄く綺麗だったもので。」


なんつー言い訳だそりゃ!!


あせあせと身振り手振りで違うんだ、盗撮とかじゃ、と隠し切れない証拠を手に持ち、言い訳するが、


「…………ふふ、あはははは!!あ、慌てすぎですよ…。」


笑ってくれた影山くんは、天使に見えた。


「うぅっ……ごめん……嫌な気持ちになったよね……。」


「え?いや、特には。」


「え、ほんと?」


「はい、別に知らない人に撮られた訳じゃないですし。名前さんですし。」


「あ、ありがとう……!」


やっぱり天使だ、優しい……。


「…………あ、でも。」


「うん?」


「代わりに、俺も写真撮らせてください。」


「え!?」


私なんかの写真撮ってなんになる!?そう言葉が出たが、影山くんはそんなの俺の写真だってそうですよ、とむくれた。


非常に恥ずかしいし、写真に撮り収めても仕方が無いと思ったが、私は勝手に撮ったのだ、拒否権なんてどこにもない。


「ど、どうぞ……。」


「あざっす。…………笑ってください。」


わ、笑う。笑う、笑わねば。影山くんのスマホに向かって無理やり口角を上げてみる。


すると震え出すスマホ。……え?よく見れば影山くん全体が震えてる。


「ふっ…………ぶふっ…………す、すっげぇ顔……。」


「ちょっと!?」


そう言いつつ何回かシャッター音聞こえたけど!?


「そ、そんな写真撮らないでよ!?」


「ふっふふっ……すんません、もっと自然に笑えますか?」


「自然って……難しいよ。」


「じゃあ俺も笑います。」


「え?」


そう言うと、にっ、と口角だけなんとか上がった笑顔。


あまりにぎこちなくて、声を上げて笑ってしまった。


「あは、あはははは!!影山くん、顔、すっごい!!」


そう笑っていると聞こえたシャッター音。


「…………え?今のでいいの?」


「………………はい、ありがとうございます。」


スマホを眺めて、酷く、酷く嬉しそうに微笑んだ影山くん。


その笑顔に、さっきとのギャップもあってか顔が熱くなる。


「じゃ、じゃあそろそろ次行こ。あっちにね、ネモフィラ咲いてるんだって!」


「ねもふぃら?」


「花の名前!」


私の隣に並び歩く影山くん。


傍から見たら、恋人同士に見えてるかな?


いつか、そうなれる日が来たら。なんて思ってたのに人間というのは貪欲で。


今すぐにでも、あなたのものになりたい。そう思ってしまう私の心も人間だった。

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