恋の力

ゴールデンウィーク合宿が始まった。


「……名前ちゃん、相変わらず手際良いね…!?」


「本当だ!!日頃家事をやっているんですか?」


「あ、え、えと。はい!両親共に仕事忙しそうなので…。」


先生と潔子さんの2人に感心されてついにやけてしまう。日頃無心でこなしていた料理の腕を発揮できるのは、こんな時ぐらいだ。


「うわぁ!?2人とも、どうしたんですか!?」


先生の慌てた声を聞き、潔子さん共々向かうと床を這いつくばってる田中くんとノヤっさん。何してんの…!?


「……苗字も……エプロン……似合うな。」


「確かに。……名前、顔は良いもんな。」


「……顔はって。」


ふむふむと見られた挙句、顔はって。しかもそれを潔子さんと並べた上で言っているのか?もはや暴言。


「そんなこと言ってないで、早く手洗ってきなよ。」


「おーす!!苗字の飯美味いから楽しみだなー!!」


「なー!!名前の飯食えんの合宿の時ぐらいだしな!!」


練習後なのに、なんであんなに元気なんだあの2人は。


しかし、私のご飯を褒めてくれるのは嬉しいので、結局にやけながら私も食堂に戻った。





「…………!?うっめえ!!!」


「だろー?苗字は料理上手なのだ!!」


「え!?これ全部苗字さんが作ったんすか!?」


「私と先生も手伝ったけど、味付けとか大事な所は全部名前ちゃんがやってる。」


「すっげええ!!!」


「い、いや……大したことは……。」


なんて言いつつにやけてしまう。純粋にストレートに褒めてくれる日向くん。ありがとうありがとう。


「おかわり下さい。」


綺麗に平らげたお皿を持って現れた影山くん。


「はい!!」


それを受け取り、ついでいく。


「…めっちゃ美味いっす。」


「……っ!!」


美味しいって田中くんもノヤっさんも日向くんも言ってくれてるのに、影山くんに言われるだけでこんなにも胸が忙しなくなる。


「あ、ありがとう!」


嬉しいし、恥ずかしい。日頃選手とマネージャーとしてしか接していないから忘れがちだが、仮にも私は彼に片想い中なのだ。


好きな人からそんな事言われたら、嬉しいに決まってる。


「はい、どうぞ!」


「あざっす。」


お皿を渡して、席に戻っていく影山くん。


めっちゃ美味いっす。その言葉を何度も何度も反芻する。


沢山ご飯を食べたわけじゃないのに、沢山眠ったわけじゃないのに、


その言葉だけで、私はこれ以上無いくらい頑張れるのだ!

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