お隣さん
「よっ……ほぁっ……!!」
足がつりそうになるぐらい背伸びする。が、
「届かぬ…………!!」
なんで私掲示係にされてんの?休みだったからって酷いよ。皆私が低身長だって知ってるのに。
先生に貰ったプリントをなんとか掲示板の上の方に貼りたくて背伸びするが、届かない。
仕方ない……椅子持ってくるか……そう諦めた時、手元からひらりといなくなったプリント。
「相変わらず小せぇなお前。」
「あ!おはよう、影山くん。」
「おはよ。……ここか?」
「そう!ありがとう!」
ん。と言って席に向かったのは影山くん。
背が高くて、確か……バレー部?あれ、バスケ部?あれ。どっちだったか。とにかく身長をまだまだ伸ばしたいそうで、今日も元気にヨーグルトを飲んでいる。
影山くんとは1度隣の席になった事があり、その時にちょっとだけ仲良くなった。
最初こそぶっきらぼうで、話しかけてくれることもほとんど無かったのだが、
お隣さんとして過ごして行く内、あまり自らコミュニケーションをとらない影山くんから声をかけてもらえるようになり、ガッツポーズをしたのは内緒だ。
影山くんぐらい大きかったら、掲示係で困る事なんて無いだろうなぁ。
なんて考えたところでもう止まってしまった身長は伸びない。切ない。
溜息をついて時計を見ると、そろそろホームルームが始まる時間。私も自分の席へと向かった。
◇
「…………あれ?」
「…………あ。」
書かれた番号の場所に席を移動すると、隣には大きな大きな影山くん。
「もしかして、隣?」
「……みたいだな。」
2人でお互いの番号、そして黒板に書かれた番号を見比べて頷く。
「そっかぁ、こんな短い期間で2回も隣になるなんて。なんか縁があるね!またよろしくね。」
「あぁ、よろしく。」
軽く笑った影山くんは、ちょっとかっこよくて。
周りの友達とかも影山くんいいよね、なんて話もよくしている。それくらいに整った綺麗な顔だ。
しかしながらそのコミュニケーション能力の低さや、目つきの悪さから中々近寄り難い。なんか怖いし。
だからこそ、皆私が少しだけ皆よりほんのちょっとだけ影山くんに近づいたから、どんな人?だとか怖くない?だとか聞いてくる。
実は影山くんはその見た目や態度などとは裏腹に、意外と優しい。
今朝みたいに困っていたら助けてくれるし、重いものなどは運んでくれるし。
怖さや取っ付きにくさだけじゃなくて、そういう優しさもみんなに伝われば良いのに。
なんて思う気持ちと、自分だけの秘密にしたい気持ちがごちゃごちゃで。
それでもやっぱり皆と仲良くなって欲しいなぁ。と偽善者ぶる私は良い子ちゃんにでもなりたいのだろうか。