ラブレター
「あ、あの……3組の苗字さん、だよね?」
「…………?はい。」
帰ろうと思って下駄箱にいた時突如知らない女の子に話しかけられ、疑問に思いながらも頷いた。
「……こ、これ……か、……影山くんに渡して貰えないかな!?」
そう言って差し出してきたのは、可愛らしい封筒に入った手紙。
影山くんへ、と綺麗に書かれたそれを見て、え?ラブレター?と感じ取った。
「……えと、ご自身で渡した方が良いのでは……?」
なんて言いつつも、初めて見た丁寧にそして本気で書かれたのであろうラブレターに興奮する。実際に渡す人っているんだ……!!
「………話す機会無いので、……その、渡しておいて欲しいです。……駄目ですか?」
「だ、駄目では無いですが……。」
あなたはそれで良いのですか……?気持ちは自分で伝えたい!!ってなるものでもないのかなぁ。恋って難しい。
「じゃ、じゃあお願いします!!!」
そう私に手紙を押し付けて、去っていった女の子。
それにしても本当にモテモテだなぁ、影山くんは。1人ぐらい付き合ってみても良いのでは?なんて考えてしまう。
明日の朝会った時に渡しておこう。そう決めて鞄にくしゃくしゃにならないよう、丁寧に入れた。
◇
「おはよう、影山くん!」
「おはよう。」
「…………あ!!」
「あ!?なんだよ、うるせぇな。」
「これ!!」
「……手紙?」
「昨日影山くんに渡すよう頼まれた!どうぞ!」
「…………は?」
「ラブレターじゃない?流石、モテる男は違うねぇ。」
「………………。」
「あれ、嬉しくないの?」
「……別に。……次から断っても良いからな。」
「え?」
「迷惑だろ、お前関係無いのに渡すだけ頼まれるなんて。」
「全然大丈夫だよ?私はどうせ影山くんと毎日顔合わせるし。」
「どうせとか言うな。」
「でも、自分で伝えたくなるものじゃないのかなぁ。とは思うかなぁ、皆が皆、少女漫画のように上手くいく訳じゃないんだもんね。」
「…………あぁ。」
「それなら怯えても仕方ないかなって思っちゃう。だから影山くんに渡したよ。」
「……そうか。」
「うん、だから気にしなくて良いからね!」
「……ん。」
そう言って頷いた影山くんは、少しだけ寂しそうな顔をしていた。
時々この顔してるけど、何考えてるんだろう。自分の恋も実ってないからその事だったりするのかな。
益々気になる影山くんの想い人。どんな美人なんだろう、年上か年下かぐらい聞いてみようかな。