かわい子ちゃん
「か、影山くん!!」
「ん?呼んでるよ?影山くん。」
ご飯を咀嚼しながら、隣で寝てる影山くんを起こす。
また告白かな?遠目に見ても可愛らしい女の子が呼んでいる。
「んぁ………………あれ、谷地さん。」
そう呟くと席を立ち、あの可愛らしい女の子の元へと歩き出した影山くん。
え!?あの影山くんが女子の名前を覚えている、だと!?
「みみみ、見た!?友達、か、影山くんが女の子の名前おぼえて、」
「私も大概だけど、名前も中々影山の事馬鹿にしてるよね。」
そう冷めた目でこちらを見る友達は私に対して酷いと思う。
谷地さんと呼ばれた子と少し話してこちらに戻ってきた影山くん。……はっ、もしかして影山くんの好きな子って、
「おかえり!」
「ただいま。」
「今の子が好きな子?」
「っはぁ!?」
「あれ、違ったか。」
「違ぇよ。すぐそういうのに結び付けんな。」
影山くんにも冷めた目で見られる、あれ?悲しくなってきたな?
「だってすっごい可愛い子だったじゃん、それに影山くんが名前覚えてたし。」
「苗字の事だって覚えてるだろ。」
「…………確かに!!」
「それに、あの人はマネージャー。」
「……え?そうなの?」
「ん。谷地さん。同い年のマネージャー。」
「え………………?めっっっちゃ可愛くない……?」
「…………そうか?」
「そうかって!?え!?あんな可愛い子に見守られて、バレーに集中出来る!?」
「出来る。谷地さんすげぇ良い人だ。」
「良い人そう!!優しそうだもんね!!」
「あぁ、優しい。」
「でも好きな子じゃないんだ?」
「…………谷地さんはそういうんじゃない。」
「ふーん…………?」
「なんだその顔は。」
本当かなぁ?と思いながら影山くんを見つめると、また頬を抓られた。いたたた!!
「ふふ、あははは!!酷い顔してんな今日も。」
「その言い方は酷過ぎるよ!?くそぅ…………日頃あんなに可愛い子と部活に励んでいたとは……そりゃ私の顔も酷く見えるよ……。」
あんな可愛らしい子と比べたら私の顔面なんて、見るに堪えないんじゃないか?……自分で言ってて悲しくなってきた。
「……別に、んなことねぇよ。」
「いいんだよ、影山くん……気なんて使わなくて。」
「お前に気を使ったことなんてねぇよ。」
「それはそれで酷い…………。」
堂々と言っちゃうあたり悪いと1ミリも思ってないなこの人……。
「とにかく、お前のことそんな風に思ってねぇから。」
「ありがとう……ありがとうね……。」
「…………おい。」
傷つく私にこうやってなんだかんだ言っても気を使ってくれる影山くんは優しい。その気持ちだけで充分だよ……。
「……どうやったらあんな風に可愛くなれるかなぁ。」
「………………だろ。」
「え?」
「…………苗字だって、可愛いだろ。」
「………………へ。」
む、と唇を突き出しながら言ってくれた言葉は、お世辞だとしても嬉しくて、私の頬は自然と上がった。
「ほら、そこの2人。いちゃついてないで5限体育なんだから早く準備しなよ。」
「「い、いちゃついてない!!」」
あっそう。そう言って体操着を持って立ち上がった友達を見て、慌てて私もお弁当を片付けて立ち上がる。
教室を出るまで影山くんの顔を見ることが出来なくて、一緒に歩く友達に言われて自分の顔が赤い事に気づき、
また、教室に残っていた影山くんも真っ赤になっていたなんてことは知る由もなかった。