迫り来る
「……え、嘘!!もしかしてまた同じクラス!?」
「見えんのか。」
「馬鹿にしてる???」
「おう。」
「おう、じゃないよ!?」
ふくらはぎがつりそうになりながらも、背伸びをして見たクラス表。
今年も同じクラスになった影山くん。結局3年間ずっと同じクラスだったな。
「今年もよろしく!」
「ん、よろしく。」
去年同様、手を繋いでもらって人の海から引っ張りあげてもらい、一緒に教室へと向かう。
「去年みたいにまた影山くん女の子達に囲まれちゃうかな?」
「……本当にあった怖い話。」
「いやそれは!!番組としてはあるけども!!」
うげぇ。とした顔で面白いこと言ってくるから笑ってしまう。本当にあった怖い話だもんね!!
「どうしたら回避出来るんだあれ。」
「……影山くんが不細工になるとか?」
「そもそも俺、自分がモテる見た目してるとか思ったことねぇけど。」
「!?!?……び、美的感覚までバレーに吸い取られちゃったの…?」
「あ???」
そういうや否や頭をその大きな手で掴まれる。いででで!!
「……俺の顔が良いって思う奴が世の中に多いってだけだろ。全員が全員良いって思う訳ねぇし。」
「まぁそれはそうだけど……影山くんのお顔は凄く綺麗に整ってると思うよ?」
「……お前も思うのか?」
「え?うん、思ってるって言うかずっと思ってたよ?1年生の時から影山くんはかっこいいなぁって。」
そう言うと嬉しそうに、そしてむず痒そうに、……ん。と言った影山くんは腹筋を褒めた時と同じ顔をしていて、
なるほど、この顔は照れてる顔なのか。と今更になって新発見。影山くん表情読みにくいんだよなぁ。
「今年も影山くんが女子達に囲まれちゃったら、私は遠目に応援しておくね!!」
「助けろよ。」
「それは、ちょっと…………私もクラスに馴染みたいし……。」
「助けつつ馴染め。」
「とんでもない事言ってるのは自覚ある??」
今日も割と横暴で、でもなんだかんだ話すのが楽しくて、そんでもって実はとっても優しい影山くんとの3年目。
今年も運が良くて同じクラスになれたけど、次は、来年は必ず離れる。
その事実がこの楽しい時間の中で際立ってしまって、卒業なんてワードは見えないフリして、ただただひたすらに目の前にいる影山くんだけで視界いっぱいになるように沢山沢山笑った。
未来の事なんて考えてないよ、来年の事なんて知らないよ、と迫り来る未来に背を向けて、ただただ今を生きていたかった。