未来の話

「………………なんてこった。」


ザーザーとバケツをひっくり返したような大雨に、立ちすくんでしまう。


しかも最近急に冷え込んできたのが雨と相まって非常に寒い。うぅ……つい最近まで暑いぐらいだったじゃん……。


「お前何してんだ。」


にゅ。と隣に現れた影山くん。


「あれ?影山くん、部活は?」


「今日体育館の整備で休み。」


「そっかぁ。」


「んで何してんだ。」


「傘忘れたの……天気予報晴れじゃなかったっけ?」


「雨だったけど。」


「あれ!?」


は?と言う顔をして傘を開いた影山くんに驚く。あれ!?


「明日は晴れだったな。」


「じゃあ明日のと見間違えたのか……朝も降ってなかったし……。」


「ん、帰るぞ。」


「うん……また明日ね……。」


「は?」


「え?」


またしても綺麗なお顔の眉間にシワが寄る。怖いんだけど??


「そのまま帰っても風邪引くだろ、傘入れてやるから。」


「え!?いいの!?」


「あぁ、だからさっさとこっち来い。」


優しい!!影山くんはやっぱり顔に似合わず優しい!!!


なんて言ったら張り倒されそうなので言わないが、代わりにありがとう!!とお礼を言いながら黒い傘の中に入れてもらう。


「……凄い、影山くんが傘を持つと柄がこんな高いところになるんだね……。」


「苗字がちいせぇだけだろ。」


「影山くんは大き過ぎだよね。」


「まだまだ伸ばす。」


「え!?今でさえ見上げるのに首が痛いのに、更に大きくなるつもり!?」


「当たり前だろ、お前毎日俺がぐんぐんヨーグル飲んでるって知ってて馬鹿にしてんのか。」


「なんでそうなるの!?馬鹿になんてしてないよ!!ただ……10年後ぐらいにはもう親子レベルに身長差ついてしまいそうで……。」


なんて、言葉が口から出てから気づく。


10年後に私達が一緒にいる可能性はどれくらいなのだろう。


きっと、ゼロに近いんじゃないかなぁ。彼と私とでは進路が違い過ぎるし、私たちを繋ぐのは学校だけなのだから。


その事実を思い出してしまい、きゅ。と唇を引き締めた。


「そうだな、そうならないようお前もカルシウム取っとけ。10年後でも同級生に見えるように。」


そう言って笑った影山くんに、ちょっとだけ涙腺が緩みそうになった。


私達には、きっと無い未来。


今が酷く楽しいからこそ、未来が怖い。


そう思ってしまうのは、私だけ?…………影山くんもだったら良いのに。

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